歴代ウルトラマン一覧をたどると見えてくる、3分間ヒーローの知られざる舞台裏
子どもの頃、夕方のテレビの前でカラータイマーの点滅を見つめていた記憶がある人は多いのではないでしょうか。1966年に放送が始まったウルトラマンは、60年近くたった今も新しいシリーズが作られ続けている、日本の特撮史の中でもひときわ息の長いコンテンツです。歴代のウルトラマンを一覧にして眺めてみると、単なるヒーローの列伝ではなく、時代ごとの制作事情や作り手たちの哲学がそのまま形になっていることが見えてきます。この記事では、誕生の経緯から設定の裏話、時代による分類、そして海外での広がりまで、ウルトラマンという存在をいくつかの角度から掘り下げてみます。
42.8%という視聴率から始まった、光の国の物語

ウルトラマンの放送が始まったのは1966年7月17日のことです。その前段として同年1月から7月まで放送されていたのが、怪獣や怪奇現象を描いた特撮ドラマ「ウルトラQ」でした。ウルトラQの平均視聴率は32.4%、最高視聴率は39.2%という驚異的な数字を記録しており、その人気を受け継ぐ形で始まったウルトラマンは、最高視聴率42.8%、平均視聴率でも36.8%に達したと伝えられています。現在のテレビ視聴の感覚からすると、ほとんど想像がつかないような数字です。
この時期の円谷プロダクションを脚本面で支えた中心人物のひとりが、沖縄出身の脚本家、金城哲夫です。ウルトラQから続く怪獣たちの物語世界を組み立てながら、後に「光の国」や「M78星雲」といったウルトラマンの出自にまつわる設定の骨格を作り上げていきました。当時の子ども向け番組としては破格の制作費と熱量がかけられていたことが、この視聴率の高さの背景にあったとされています。
M78星雲という設定は、実は脚本の誤植から生まれた

ウルトラマンの出身地として語られる「M78星雲」は、シリーズを知らない人でも耳にしたことがあるであろう有名な固有名詞です。しかし、この設定にはよく知られた裏話があります。企画段階では、ウルトラマンの故郷は「M87星雲」とされていました。ところが台本の印刷時に「M87」が「M78」と誤記され、そのまま撮影・放送されてしまったことで、以後のシリーズでも「M78星雲」が定着したというのです。
実際、ウルトラQの未発表脚本の中には、怪獣の出身地として「M87星雲」が登場する作品が存在していたことが確認されています。さらに「ウルトラマンA」のあるエピソードでは、登場人物がウルトラマンの故郷を「M78星雲」ではなく「M87星雲」と呼んでしまっている場面も残っており、誤植が定着する過程の名残のように見えます。
興味深いのは、実在の天体としてのM78とM87がまったく異なる存在だという点です。実際のM78はオリオン座にある反射星雲で、地球からの距離は約1600光年。一方のM87はおとめ座にある巨大楕円銀河で、地球から約6000万光年も離れています。2019年に人類史上初めて撮影に成功したブラックホールの画像でも知られる天体がM87であり、本来ウルトラマンの故郷として想定されていたのがこちらだったという事実は、天文ファンの間でもたびたび話題になります。たった一文字の誤植が、半世紀以上語り継がれる設定として定着してしまったわけです。
彫刻家が怪獣に込めた、前衛芸術という発想

ウルトラマンや怪獣たちのあのユニークなデザインを支えたのが、美術担当として参加した成田亨です。成田は青森県出身で、武蔵野美術学校で彫刻を学んだ経歴を持つ本格的な美術家でした。1965年から68年にかけて「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の美術を手がけ、ヒーローや宇宙人、怪獣、メカニックやセットのデザインを一貫して担当しています。
成田のデザインの特徴は、単に恐ろしさや強さを表現するだけでなく、同時代の西洋モダンアートや前衛芸術の造形言語を怪獣という枠組みに注ぎ込んでいたことです。ガラモンやバルタン星人をはじめとする、いわゆる「成田怪獣」と呼ばれるキャラクター群には、シュルレアリスムやダダイスムといった美術運動から着想を得たとされるモチーフが見られます。左右非対称なハサミ状の手や、丸みを帯びた複眼、生物らしい質感と抽象的な幾何形体を同時に成立させる造形感覚は、単に怖いもの、強いものを作るという発想とは明らかに一線を画していました。子ども向け番組の枠を超えて、彫刻家としての美意識がそのまま画面に反映されていたという点は、ウルトラマンが単なる子ども向けヒーロー番組として消費されず、今なお美術展のテーマとして取り上げられ続けている理由のひとつといえます。
成田自身は、怪獣デザインにあたって自らに三つの原則を課していたことを語っています。ひとつは、手足や首の数が異常に増えたような妖怪めいた怪獣は作らないこと。もうひとつは、実在する動物をそのまま大きくしただけの怪獣にしないこと。そしてもうひとつは、身体の一部が破壊されたような気味の悪い表現を避けることです。成田は怪獣を単なる敵役の記号ではなく「カオス(混沌)の象徴」として捉え、既存の生物や無生物からヒントを得つつも、自由な変形と組み合わせによって独創的な形を作り出すことを目指していたといいます。「新しいデザインは必ず単純な形をしている」という言葉を残しているように、複雑さで凄みを出すのではなく、単純で強い形を追求する姿勢が、半世紀以上たっても古びないデザインにつながっているようです。実際、成田亨の仕事を振り返る大規模な回顧展が各地の美術館で開催されており、怪獣デザインが芸術作品として再評価される流れは今も続いています。
血のつながらない「ウルトラ兄弟」という設定上の家族
ウルトラマンシリーズには、ゾフィーや初代ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンA、ウルトラマンタロウらを指す「ウルトラ兄弟」という有名な括りがあります。この設定が生まれたのは1971年、テレビシリーズ「帰ってきたウルトラマン」が放送されていた最中のことでした。しかもこの設定は、本編の脚本から生まれたものではありません。当時、ウルトラシリーズの誌面展開を担っていた小学館の学習雑誌「小学二年生」の編集長だった井川浩が、誌面企画としてゾフィーたちを「兄弟」というわかりやすい関係性で紹介したことが発端だったとされています。いわば、子ども向け雑誌の企画がそのまま公式設定として本編に取り込まれていったという、逆輸入のような経緯があったわけです。
もちろん、実際のウルトラ戦士たちに血のつながりはありません。同じM78星雲の出身で、年齢や経験に差のある先輩後輩、あるいは同僚のような関係を、子どもにも理解しやすい「兄弟」という言葉に置き換えたものです。その後の展開では、ウルトラマンタロウの実の両親として「ウルトラの父」「ウルトラの母」が登場し、セブンとタロウがいとこにあたる、帰ってきたウルトラマンはウルトラの母の妹と結婚しているため義理の弟であり義理の叔父でもある、といった複雑な相関図まで作られていきました。これらの細かい設定の多くは現在のシリーズでは使われていませんが、児童誌の企画から始まった緩やかな「家族」の物語が半世紀以上にわたって語り継がれてきたという事実自体が、ウルトラマンというコンテンツの成り立ちをよく表しています。
戦いがなぜ3分間なのか、カラータイマーに隠された二つの理由

ウルトラマンの最も有名なルールのひとつが、地球上で活動できる時間が3分間しかないという設定です。胸のカラータイマーが点滅し始めると、そこからタイムリミットが迫るという演出は、シリーズを象徴する名物になりました。この設定が生まれた背景には、複数の実務的な理由があったと考えられています。
ひとつは制作コストの問題です。着ぐるみとミニチュアセットを使った特撮の怪獣バトルシーンは撮影に多くの手間とコストがかかるため、時間をあらかじめ区切ることで予算と撮影スケジュールを管理しやすくする狙いがあったとされています。もうひとつ語られているのが、ボクシングの1ラウンドと同じ3分間という尺が、視聴者にとって見応えのある対決の長さとして感覚的に受け入れられやすかったという説です。加えて、怪獣に対して無敵すぎるヒーローでは物語として面白みが欠けてしまうため、子どもにもすぐ理解できる明快な弱点を作る必要があったという、ドラマ構成上の理由も挙げられています。
この弱点を可視化する装置として生まれたのがカラータイマーです。成田亨が最初に描いたウルトラマンのデザイン案には、実はカラータイマーは存在していなかったとされています。作劇上どうしても弱点を表現する仕掛けが必要になり、後からあの胸の発光装置が付け加えられたというのが経緯です。通常時は青く安定して点灯し、残り時間が少なくなると赤く点滅して警告音を発するという演出は、当時まだ主流だった白黒テレビでの視認性を考慮した結果だとも言われています。色の違いがわからない画面でも、点滅という動きの変化であれば一目でピンチが伝わる、という工夫が込められていたわけです。
そしてもう一つ欠かせないのが、スーツアクターの身体的な負担です。初代ウルトラマンを演じたスーツアクター古谷敏は、アメリカ製のウェットスーツを加工して作られたゴム製の着ぐるみに、大きな電池を内蔵した重いマスクをつけて演技していました。隙間から入り込む熱気や酸素不足など、過酷な環境での演技だったことを自身が後年語っています。長時間の活動を前提にした着ぐるみ演技そのものが現実的に難しかったことも、3分間という制限が受け入れられた一因だったと見ることができます。古谷はその後、スーツアクターの労働環境の改善に尽力した人物としても知られています。
昭和・平成・新世代、三つの時代に分かれてきたウルトラ一族
歴代のウルトラマンを一覧化しようとすると、まず大きな時代区分でシリーズ全体を捉える必要があります。1966年の初代ウルトラマンから始まったいわゆる昭和のウルトラシリーズは、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンA、ウルトラマンタロウ、ウルトラマンレオと続き、1980年のウルトラマン80まで、ほぼ毎年のように新作が作られる黄金期を迎えました。
その後しばらくの沈黙期を経て、1996年のウルトラマンティガから、いわゆる平成の新シリーズが始まります。ウルトラマンダイナ、ウルトラマンガイアと続くこの時期は、昭和の作品群とは異なる世界観やより現代的なテーマを取り入れた作風が特徴です。続くウルトラマンコスモスやウルトラマンネクサスなどの時期を経て、2013年には円谷プロダクション創立50周年を記念してウルトラマンギンガが放送され、ここから「新世代(ニュージェネレーション)ヒーローズ」と呼ばれる現在まで続く系譜が始まりました。
新世代以降は、ウルトラマンX、ウルトラマンオーブ、ウルトラマンジード、ウルトラマンR/B、ウルトラマンタイガ、ウルトラマンZ、ウルトラマントリガー、ウルトラマンデッカー、ウルトラマンブレーザー、ウルトラマンアークと、ほぼ1年ごとに新主人公が登場するサイクルが定着しています。昭和と平成、新世代という大きな三区分を把握しておくと、歴代のウルトラマン一覧を眺めたときに、それぞれの作品がどの時代の文脈に位置しているのかが見えやすくなります。
半世紀を経ても色褪せない人気を証明した「シン・ウルトラマン」

2022年に公開された映画「シン・ウルトラマン」は、企画・脚本を庵野秀明、監督を樋口真嗣が務めた作品で、初代ウルトラマンの世界観を現代の映像技術で再構築した意欲作でした。公開からわずか3日間で興行収入9.9億円を記録し、その年の邦画実写作品としてトップクラスのスタートを切りました。その後も動員を伸ばし続け、公開から約2か月弱の時点で動員269万人、興行収入40億円を突破しています。
半世紀以上前に生まれたキャラクターが、最新の映像表現と結びついたときに大ヒット作として受け入れられたという事実は、ウルトラマンというキャラクターがいかに世代を超えて浸透しているかを示す出来事でした。子どもの頃にブラウン管の前で見ていた世代が親となり、その子どもたちと一緒に映画館に足を運ぶという循環が、このコンテンツの寿命を支え続けているとも言えます。
国境を越えて広がり続ける、光の国のファン層

ウルトラマンの人気は日本国内だけにとどまりません。清水栄一と下口智裕による漫画を原作にしたフル3DCGアニメ「ULTRAMAN」は、2019年にシーズン1がNetflixで世界配信されると、海外のファンからも高い評価を獲得しました。2023年にはファイナルシーズンが同じくNetflixで全世界同時配信され、物語が完結を迎えています。原作漫画自体も単行本が世界11言語、24の国と地域で出版されるなど、国境を越えて読者を広げてきました。
実写シリーズの海外展開も加速しています。近年のウルトラマンシリーズでは、日本国内での放送とほぼ同時期に海外複数の国と地域で吹き替え版や字幕版が配信される体制が整えられるようになりました。その背景には、中国をはじめとするアジア圏での爆発的な人気があります。中国では関連グッズやトレーディングカードの市場が大きく育っており、ウルトラマンのカードを扱う企業が急成長を遂げたという報道も出ているほどです。普遍的な正義と犠牲のテーマ、時代背景を反映した怪獣造形、そして特撮技術そのものへのこだわりが、言語や国境を越えて受け入れられる土台になっていると見られています。
配信プラットフォームの普及によって、かつては日本国内のローカルな特撮番組という位置づけだったウルトラマンが、今では世界中の視聴者が同時にアクセスできるコンテンツへと変化しています。着ぐるみと特撮セットで作られた1960年代の怪獣バトルが、巨大なフランチャイズとしていまだに拡張を続けているという事実は、歴代のウルトラマン一覧をただの作品リストとしてではなく、時代ごとの技術と文化がどう受け継がれてきたかを示す記録として読み直すきっかけになるのではないでしょうか。
参考
- ウルトラマンの活動時間が「3分間」の理由…特撮コスト説が有力、ボクシングとも関係!?
- 【カラータイマー】ウルトラマンの活動時間が「3分間」の理由とは?
- 昭和特撮「古谷敏」〜ウルトラマンを創った男たち③
- 「ウルトラマンと怪獣をデザインした男」、成田亨の展覧会を福岡で開催。
- 【シン・ウルトラマン公開間近!】初代から最新作まで歴代ウルトラマンの全軌跡を解説
- 【誤植ネタ】ブラックホールが観測された『M87』、元々はウルトラマン達の故郷?
- ウルトラ兄弟の意外な家族関係とゾフィー兄さん。
- 成田亨とは?ウルトラマン・怪獣デザインの裏側と生涯について詳しく解説
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- 西暦1966年 - 「ウルトラマン」放映開始




