お墓参りで見かける墓石の種類一覧、その形と石には理由があった

お盆やお彼岸に霊園を歩くと、同じような四角い石が並んでいるようでいて、よく見ると形も色もばらばらであることに気づきます。縦長のもの、横に低いもの、ハート型やギターの形をしたもの。素材も黒っぽい石もあれば白っぽい石もあります。ふだんは深く考えずに通り過ぎてしまう墓石ですが、その形と素材のひとつひとつには、宗教観や地域の気候、時代ごとの供養のあり方が反映されています。今回は日本国内の墓石の種類から、世界各地の弔い方の違いまで、墓石という切り口でたどってみます。普段は足を止めて眺めることもない石ですが、掘り下げてみると宗教や気候、時代の価値観がぎゅっと詰め込まれた小さな建造物であることが見えてきます。

和型・洋型・デザイン墓、日本の墓石を分ける三つの型

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日本の墓石は大きく分けて和型、洋型、デザイン墓の三つに分類されます。和型は縦長の角柱を重ねた昔ながらの形で、日本のお墓と聞いて多くの人がまず思い浮かべる姿です。台石の上に竿石と呼ばれる縦長の石を立て、家名や家紋を刻むのが一般的な構成になっています。洋型は背が低く横長のデザインが主流で、和型に比べて重心が低いため地震などの揺れに強く、彫刻やデザインの自由度が高いのが特徴です。名前だけでなく、絵柄やメッセージ、シンボルマークを刻めることから近年人気が高まっています。デザイン墓はこの二つの定型にとらわれず、ハート型や円形、曲線を活かした形など、故人の個性や家族の思いをそのまま形にしたものです。ピアノの形やギターの形、好きだった花をかたどった形など、依頼主の希望に沿って一点ものとして作られることも珍しくありません。

種類 特徴 平均購入価格の目安
和型 縦長の角柱、伝統的な日本のお墓の形 約189.2万円
洋型 横長で低重心、彫刻の自由度が高い 約158.1万円
デザイン墓 定型にとらわれない自由な形状 約189.6万円

価格だけを見ると洋型がやや抑えめですが、デザイン墓と和型はほぼ同水準です。形の違いは単なる好みではなく、耐震性や彫刻のしやすさといった実用面の違いでもあり、どの型を選ぶかは残された家族の暮らし方や価値観をそのまま映すことにもなります。

角柱のルーツをたどると見えてくる五輪塔、宇宙観を石に刻むという発想

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和型墓石のさらに古い原型をたどると、五輪塔という仏塔にたどり着きます。五輪塔は下から四角い地輪、丸い水輪、三角の火輪、半月形の風輪、宝珠の形をした空輪の五つのパーツを積み重ねた構造をしていて、密教でいう地水火風空という五つの要素、宇宙の根本を象徴しているとされます。もともとはインドで生まれた小さな容器のような形で、中に遺骨を納めるためのものでした。それが平安時代に日本へ伝わった際、石材で同じ形が作られるようになり、供養塔やお墓として定着したといわれています。空海が日本で最初に石造の五輪塔を考案したという説も伝わっており、今の四角い墓石の背景には、千年以上前の宇宙観がかたちを変えて残っていることになります。普段見かける角柱の墓石も、もとをたどれば宇宙の構成要素を一つずつ積み上げた塔だったと考えると、見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。

なぜ大理石ではなく御影石なのか、石選びに隠れた耐久性の話

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日本の墓石のほとんどは御影石と呼ばれる石材でできています。御影石は花崗岩の別名で、石英、長石、雲母を主成分とする硬い石です。吸水率が低いため雨水や湿気が内部に染み込みにくく、凍結による割れや変色が起きにくいという特性があります。屋外で数十年から百年単位の風雨にさらされ続ける墓石にとって、この耐久性は欠かせない条件です。彫刻がしやすいイメージのある大理石は、磨けば美しい光沢が出ますが、酸性の雨に弱く風化しやすいため、屋外に長期間置く墓石にはあまり向いていません。

御影石という名前は、兵庫県神戸市の御影地区で採掘されていたことに由来し、そこから全国的にこの呼び名が広まりました。実際には御影石と呼ばれる石材は国内外に約300種類あるとされ、黒御影石、白御影石、青御影石、赤みを帯びた桜御影石など色味も多様です。黒は重厚感、白は清潔感、青は希少性や涼しげな印象、赤や桜色は個性的な存在感といったように、色の違いがそのまま墓石の印象を左右します。近年はインドや中国など海外産の御影石も多く流通しており、磨くと深い輝きの出る黒御影石は特に人気の高い石材として知られています。

国産の御影石の中でも別格として扱われるのが、香川県高松市の庵治町で採れる庵治石です。研磨した表面に「斑」と呼ばれるまだら模様の潤いのある光沢が浮かび上がるのが最大の特徴で、この模様は地中で複数の鉱物がゆっくり冷え固まる過程で生まれます。結晶の粒子が非常に細かいため水を吸いにくく、風化にも強いという実用面の強さも兼ね備えていますが、良質な原石が少なく、斑の美しさをそろえて切り出すのが難しいことから、採れる原石のうち製品になるのはごくわずかとされています。同じ御影石という括りの中でも、産地によってここまで希少性と価格が変わるというのは興味深いところです。普段何気なく目にしている墓石も、実は石材業界の中では等級や産地によって細かく格付けされている工業製品的な一面を持っているわけです。

沖縄だけに息づく亀甲墓と破風墓、国内にもある墓文化の違い

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同じ日本国内でも、沖縄の墓石は本土とはまったく異なる姿をしています。代表的なのが亀甲墓で、屋根の部分が亀の甲羅のように丸く盛り上がった形をしているのが特徴です。この丸みは妊娠した女性のお腹に見立てられているという説もあり、人は死ぬと再び母親の胎内に戻るという考え方が背景にあるといわれています。もう一つの代表的な形が破風墓で、三角形の屋根を持つのが特徴です。破風とは屋根の側面に山形に取り付けられた板のことを指し、琉球王国の時代には王族しか使うことを許されない格式の高い形だったとされています。

沖縄でこうした独自の墓文化が育った背景には、古墳時代を経ていない地域特有の歴史があります。もともとは自然の洞窟や崖に遺体を安置する風葬が主流で、後に岩盤に横穴を掘る墓が登場し、16世紀ごろになって破風墓が広まりました。人は亡くなると自然に還っていくという土地の思想と、中国大陸から伝わった影響が組み合わさって、本土とは異なる独自の墓のかたちが作られていったのです。同じ国の中でも、地形や歴史が違えば石の形もこれほど変わるという好例といえます。旅行で沖縄を訪れた際にお墓の存在感に驚いたという声が多いのも、本土の墓地の景色に慣れた目には、その丸みと大きさがかなり異質に映るためだと考えられます。

日本も土葬の国だった、火葬が定着したのはここ150年ほどのこと

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今でこそ日本の火葬率はほぼ100%ですが、この状態が定着したのは実はそれほど古い話ではありません。火葬そのものの痕跡は古墳時代後期の6世紀までさかのぼり、奈良時代の僧侶が火葬されたという記録も残っていますが、平安時代を通じて火葬が行われていたのは主に皇族や貴族、僧侶に限られていました。江戸時代まで庶民のあいだでは土葬が主流であり続け、火葬が一般に広がるのは江戸時代後期から明治時代にかけてのことです。

明治初期には、土地の確保や公衆衛生上の懸念から一時的に火葬を禁止する法令が出されたこともありましたが、わずか数年で撤回され、その後は都市部の人口増加とともに火葬場の整備が進み、庶民のあいだにも火葬が定着していきました。今では当たり前のように受け止められている火葬という選択も、長い歴史の中ではむしろ新しい習慣であり、江戸時代の人々からすれば、現代の墓地の光景はかなり異質に映るかもしれません。

世界の弔い方はそもそもの前提が違う、火葬・土葬・水葬という選択

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日本では火葬が9割以上を占めますが、世界に目を向けると弔い方の前提そのものが異なります。土葬を基本とする国や地域は今も多く、水に遺灰を流す弔い方も存在します。ヒンドゥー教徒の多いインドでは火葬をしたうえで遺灰をガンジス川に流す習慣があり、その場合は個別のお墓を持たない人がほとんどです。韓国では近年、土地不足を背景に火葬が推奨されるようになり、ロッカー式の納骨堂に遺骨を納める形が一般的になりつつあります。中国でも同様に、土地を圧迫しない樹木葬や海洋葬が国の方針として推進されています。お墓という発想自体が、土地の広さや宗教観によって大きく形を変えているのがわかります。日本のように国土が狭く、火葬場の整備が進んでいる国だからこそ、コンパクトな縦長の墓石が主流になったという見方もでき、墓石の形は宗教だけでなく、その土地の地理的な事情とも密接に結びついているといえそうです。

十字架と平板、キリスト教圏に多い墓石のかたちと色

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キリスト教を信仰する国々では、十字架を立てたり平板状の石を配置したりする墓石が多く見られます。色も日本でよく見る黒や灰色とは異なり、白系の石が好まれる傾向があります。日本では一つのお墓を家単位で何世代にもわたって継承していくのが一般的ですが、海外では家ではなく個人単位でお墓を設ける文化が多く、家族であっても一人ひとりに個別の墓石が並ぶ光景が珍しくありません。同じ「お墓」という言葉でも、誰のための、何世代分の場所なのかという発想からすでに違っているわけです。

土葬を貫くイスラム教、質素な墓に込められた来世への信仰

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イスラム教では土葬が基本とされ、墓そのものも簡素に作られる傾向があります。これは来世観と深く関わっていて、イスラムの教えでは死後に神による審判が下され、その結果によって天国か地獄かが決まるとされています。つまり死は終わりではなく、来世での審判を待つ通過点という位置づけです。遺体をできるだけそのままの形で残すために土葬が選ばれ、墓を華美に飾り立てることよりも、来世に向けた信仰の姿勢そのものが重視されるため、墓地や墓石は控えめな作りにとどめられることが多いのです。

花の代わりに石を置く、ユダヤ教の墓参りにある独特な習慣

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ユダヤ教の墓参りでは、花を手向ける代わりに、その場にある小石を墓の上にそっと置いていくという独特の習慣があります。この習慣にはいくつかの由来が伝えられていて、ひとつは古代にイスラエルの人々が砂漠に墓を作っていた時代、石を積むことで墓が崩れないようにという実用的な意味があったという説です。もうひとつは、死者の魂が埋葬後しばらくのあいだ体を離れて漂っているとされ、その魂が悪さをしないよう、墓に石を置くことで「ここに墓を守りに来た者がいる」という印にするという霊的な意味合いの説です。理由は一つに定まっていませんが、花のように枯れてしまうものではなく、いつまでも残る石を選んで手向けるという発想には、日本の墓石文化とはまた違った石への向き合い方が表れています。

遺灰をダイヤモンドに変える、日本で広がりつつある新しい供養のかたち

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近年の日本では、伝統的な石の墓石にとどまらない新しい供養の形も広がっています。代表的なのが遺骨ダイヤモンドで、遺骨から抽出した炭素を原料に、高温高圧の環境で人工的にダイヤモンドを生成するというものです。化学組成や硬度、輝き方は天然のダイヤモンドと変わらず、この製法自体は1953年にアメリカで発明され、現在はスイスやドイツ、ロシアなどでも製作されています。費用はおおむね40万円から200万円程度とされ、完成までに半年以上かかることも珍しくありません。石そのものを墓標にせず、樹木や草花を目印にする樹木葬も全国的に広がっていますし、血縁関係のない複数の人の遺骨を一つの納骨室にまとめて納める合葬墓も、一人あたり数万円から選べる選択肢として注目されています。大きな石を建てるという発想そのものが、少しずつ多様化しているところです。

死してなお笑いを忘れない、イギリスの墓碑銘という文化

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墓石に刻まれる文字にも、国によって色合いの違いがあります。日本の墓石は名前と没年月日、家名を刻むことが中心ですが、イギリスの墓碑銘、いわゆるエピタフの文化では、短い詩や座右の銘、ときにはしゃれの効いた言葉まで刻まれてきました。16世紀から19世紀にかけてのイギリスでは、言葉遊びや風刺を効かせたユーモラスな墓碑銘が数多く生まれ、当時の人々の死生観とユーモアのセンスを今に伝えています。墓に刻む文字は英雄的な功績をたたえるだけのものと思いがちですが、日常の軽妙な言い回しを最後の言葉として選ぶという発想は、真面目になりすぎない弔い方の一つの形といえそうです。

石という永く残る素材に、人はそれぞれの死生観を刻んできた

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日本の和型と洋型の違い、御影石という石材選びの理由、庵治石のような希少な国産銘石、沖縄独自の亀甲墓や破風墓、そして世界各地に広がる土葬や水葬、石を積む習慣や質素な墓のあり方まで見てくると、墓石という一見地味な存在が、実はその土地の宗教観や気候、家族観をそのまま映し出す鏡になっていることがわかります。石は数十年、数百年という単位で風雨に耐え、そこにあった人の記憶を留め続けます。同じ石という素材を選びながら、ある土地では家族の歴史を何代にもわたって刻み続け、別の土地では一人の人生の区切りとして個別に立てられ、また別の土地では花の代わりに小石として静かに積まれていく。弔い方の数だけ、石の使われ方があるといってもよいかもしれません。同じ石でも、ある場所では何百キロも離れた採石場から運ばれてきた御影石が磨き上げられ、また別の場所では足元に転がっていた小石がそのまま墓標代わりに使われる。石という素材の懐の深さを感じさせる話でもあります。次にお墓参りに行く機会があれば、いつも通り過ぎている墓石の形や色、刻まれた文字にも少し目を向けてみると、これまでとは違った景色が見えてくるかもしれません。

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参考

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-偏愛が気づかせる、私たちの見えていなかった世界-

なぜだか目が離せない。
偏った愛とその持ち主は、不思議な引力を持つものです。
“偏”に対して真っ直ぐに、“愛”を注ぐからこそ持ち得た独自の眼差し。
そんな偏愛者の主観に満ちたピントから覗かれる世界には、
ウィットに富んだ思いがけない驚きが広がります。
なんだかわからず面白い。「そういうことか」とピンとくる。

偏愛のミカタ PinTo Times