【完全版】とんこつラーメンの起源は博多じゃない?発祥の地「久留米」と白濁スープ誕生の歴史
とんこつラーメンの発祥地と聞いて、どこを思い浮かべますか? 実は「博多」ではなく、「福岡県久留米市」なんです。さらに、現在主流となっているあの白濁した濃厚なスープは、緻密な計算で作られたわけではなく、火加減の「失敗」から生まれた偶然の産物でした。
とんこつラーメンといえば「博多」のイメージが強いですが、ラーメン史を紐解くと、そのジャンルを生み出したのは久留米。そこから数十年の歳月をかけて九州全土へ広がり、各地の気候や労働環境に合わせて独自の進化を遂げてきたという、面白くて奥深い歴史があります。
この記事では、「本当の発祥はどこ?」「なぜスープは白濁しているの?」といった疑問にお答えしつつ、久留米、博多、熊本といったご当地豚骨ラーメンの違いや歴史的背景を分かりやすく解説します。ルーツを知れば、次の一杯がもっと美味しく感じられるはずですよ。
- 1. とんこつラーメンの発祥・ルーツは「福岡県久留米市」
- 1.1. 意外と知らない?「博多ラーメン」との違いと起源
- 1.2. 日本初の豚骨ラーメンを生んだ屋台「南京千両」(1937年)
- 2. なぜ白い?白濁とんこつスープ誕生の歴史と秘話
- 2.1. 誕生当時の豚骨スープは「透明」だった!
- 2.2. 失敗から生まれた奇跡?白濁スープの生みの親「三九」(1947年)
- 2.3. 伝統の「呼び戻し」技法と九州各地への広がり
- 3. 起源から独自進化!九州を代表する豚骨ラーメンの特徴
- 3.1. 濃厚で奥深い元祖の味「久留米ラーメン」
- 3.2. 屋台文化から生まれた細麺と替え玉「博多・長浜ラーメン」
- 3.3. 香ばしいニンニクが食欲をそそる「熊本ラーメン」
- 4. 発祥の地で歴史を味わう!久留米のルーツを感じる名店
- 4.1. 南京千両 本家(すべてはここから始まった元祖の味)
- 4.2. 久留米 大砲ラーメン 本店(呼び戻しスープの代名詞)
- 5. とんこつラーメンの起源を知ってさらに美味しく味わおう
- 6. 参考
とんこつラーメンの発祥・ルーツは「福岡県久留米市」

日本のラーメン文化において、豚骨をベースとしたラーメンの起源は博多ではなく久留米市にあるというのは、揺るぎない歴史の事実です。まずは、広く誤解されがちな博多ラーメンとの違いと、久留米での誕生秘話を時代背景とともに見ていきましょう。
意外と知らない?「博多ラーメン」との違いと起源
今日、豚骨ラーメンの代表格として知られる「博多ラーメン」ですが、実は久留米で豚骨ラーメンが誕生してから数年遅れて形作られました。
博多ラーメンのルーツは、昭和15年(1940年)頃に創業した「三馬路」や、終戦直後の昭和21年(1946年)に創業した「赤のれん」「博龍軒」といった屋台群にあります。現在の博多豚骨ラーメンの原型を作ったとされる「赤のれん」の初代・津田茂氏は、中国に出兵していた際に現地で食べた「十銭ソバ」からヒントを得て、戦後の食糧難の中で豚骨を余すことなく使ったスープを完成させました。
面白いことに、初期の博多ラーメンは現在のような極細ストレート麺ではなく、平打ち麺(細平麺)が主流でした。博多ラーメンは、戦後の復興期における屋台文化の中で独自の発展を遂げてきたのです。
一方の久留米ラーメンは、博多よりもさらに前、戦前の段階で産声を上げていました。
| 項目 | 久留米ラーメンの起源 | 博多ラーメンの起源 |
| 誕生時期 | 1937年(昭和12年) | 1940年〜1946年頃(昭和15〜21年) |
| ルーツとなる店舗 | 南京千両 | 三馬路、赤のれん、博龍軒など |
| 誕生のヒント | 支那そば + 長崎ちゃんぽん | 中国・奉天の「十銭ソバ」など |
| 初期の麺の特徴 | チャンポン麺に近い中太〜中細 | 平打ち麺(細平麺) |
日本初の豚骨ラーメンを生んだ屋台「南京千両」(1937年)
日本で初めて豚骨ラーメンを提供したのは、1937年(昭和12年)に西鉄久留米駅前に開店した屋台「南京千両」です。
創業者の宮本時男氏は長崎県島原市の出身でした。当時、東京や横浜の中華街で流行し始めていた「支那そば(中華そば)」の作り方を学び、そこに自身の故郷である「長崎ちゃんぽん」の要素を組み合わせるという画期的なアイデアを思いつきます。
つまり、豚骨ラーメンは「横浜の中華そばの技術」と「長崎ちゃんぽんの豚骨ベース」という二つの食文化が、久留米の地で出会って生まれたものなのです。
この一杯が久留米で大ヒットした背景には、当時の産業構造が関係しています。久留米はブリヂストンなどのゴム産業メーカーが集まる一大工業都市でした。工場で働く労働者たちは、安くてカロリーが高く、塩分を手軽に補給できる食事を求めていました。南京千両のラーメンは彼らのニーズにぴったりと合い、久留米の庶民の味として深く根付いていったのです。
なぜ白い?白濁とんこつスープ誕生の歴史と秘話

今の私たちが「とんこつラーメン」と聞いて思い浮かべるのは、ミルクのように真っ白な濃厚スープですよね。しかし驚くべきことに、誕生当時のスープは全く違う見た目をしていました。
誕生当時の豚骨スープは「透明」だった!
1937年に考案された日本初の豚骨ラーメンは、現在のような白濁スープではなく、透明感のある「清湯(チンタン)スープ」でした。
理由は、宮本氏がスープ作りの基礎を学んだ中華料理の技法にあります。中華の汁そばでは、スープを濁らせることは「雑味が出る」として避けられていました。そのため、豚骨を使いながらも決してグラグラと煮立たせず、弱火でじっくり旨味を抽出していたのです。
この「透明な豚骨スープ」という伝統の味は、今も久留米の「南京千両 本家」で受け継がれています。
失敗から生まれた奇跡?白濁スープの生みの親「三九」(1947年)
透明だったスープが、現在のような濃厚な白濁スープ(白湯)へと劇的な変化を遂げたのは、南京千両の創業から10年後の1947年(昭和22年)。同じく久留米で開業した屋台「三九(さんきゅう)」でのある出来事がきっかけでした。
初代店主の杉野勝見氏が、母親にスープの火加減を任せて買い出しに出かけた日のこと。母親がうっかり強い火力のまま長時間放置してしまい、杉野氏が帰宅すると、スープが激しく煮立ち、水分が飛んで真っ白に濁りきっていたのです。
本来なら「失敗作」として捨てるべきところですが、開店時間が迫っており作り直す時間がありません。杉野氏は窮余の策として、この白濁スープに味付けをして試しに飲んでみました。
すると驚いたことに、これまでの透明なスープにはなかった圧倒的なコクと、骨の髄から溶け出した深い旨味が広がったのです。
科学的に言えば、強火で煮込まれたことで豚骨からゼラチン質(コラーゲン)が溶け出し、水と脂が結びつく見事な「乳化状態」を作り出していました。
この偶然の失敗と、それを捨てずに味見をした機転こそが、「白濁系とんこつラーメン」が誕生した歴史的瞬間でした。
伝統の「呼び戻し」技法と九州各地への広がり
三九が生み出した白濁スープは、その後久留米の屋台文化の中でさらに磨かれていきます。その到達点と言えるのが、久留米ラーメン最大の特徴である「呼び戻し(継ぎ足し)」という独自のスープ製法です。
その日に作ったスープを使い切って鍋を空にするのではなく、古いスープを「種」として残し、そこに新しい豚骨と水を加えて炊き続ける方式です。老舗のうなぎ屋や焼き鳥屋の「秘伝のタレ」と同じ理屈ですね。
新しい豚骨のフレッシュな風味と、長時間煮込まれた古い豚骨の熟成された旨味が重なり合い、他にはない重厚なコクが生まれます。
一方、白濁スープを発明した三九の杉野氏は、のちに北九州に移住。三九自体も熊本県玉名市や佐賀県へと出店を繰り返し、そこで修行した職人たちを通じて、白濁スープの技術は九州全土へとあっという間に広がっていきました。
起源から独自進化!九州を代表する豚骨ラーメンの特徴

久留米で誕生した白濁豚骨スープは、九州各地へと伝わる中で、その土地の労働環境や人々の好みに合わせて見事な独自進化を遂げました。「久留米」「博多・長浜」「熊本」の3大ラーメンの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 久留米ラーメン | 博多・長浜ラーメン | 熊本ラーメン |
| スープ製法 | 呼び戻し(継ぎ足し熟成型) | 取りきり(当日使い切り均質型) | 取りきり(豚骨+鶏ガラブレンド) |
| スープの濃度 | 非常に濃厚で重厚なコク | 比較的あっさりから濃厚まで幅広い | 濃厚だが鶏ガラによりマイルド |
| 麺の特徴 | 中細ストレート麺(低加水) | 極細ストレート麺(低加水) | 中太ストレート麺 |
| 麺の硬さ指定 | 基本的に行わない | バリカタ、粉落とし等、細かく指定 | 普通〜やや硬め |
| 替え玉文化 | 基本的にない(大盛りで対応) | 発祥の地であり、前提のシステム | 基本的にない |
| 特徴的な具材 | カリカリ(豚脂の揚げ玉)、海苔 | 青ネギ、紅生姜、辛子高菜、ゴマ | ニンニクチップ、ブラックマー油 |
濃厚で奥深い元祖の味「久留米ラーメン」
久留米ラーメンの魅力は、なんといっても「呼び戻し製法」による熟成された濃厚スープです。強烈な豚骨の匂い(獣臭)がすることがありますが、それこそが熟成の証。一度ハマると抜け出せない中毒性があります。
麺はスープに負けないよう、少し太めの中細ストレート麺。そして欠かせないのが「カリカリ」と呼ばれる豚脂の揚げ玉のトッピングです。濃厚なスープに香ばしさと食感のアクセントを加えてくれます。
屋台文化から生まれた細麺と替え玉「博多・長浜ラーメン」
現在おなじみの「極細麺」と「替え玉」のシステムは、久留米ではなく福岡市の長浜鮮魚市場の労働環境から生まれた「長浜ラーメン」の文化です。
市場で働く人々が短い時間でサッと食べられるよう、すぐに茹で上がる「極細麺」が考案されました。しかし極細麺は伸びやすいため、「少なめの麺を先に出し、後から新しい麺を追加する」という画期的なシステムが誕生しました。これが替え玉の原型です。
スープも、その日のうちに使い切る「取りきり」製法が主流に。臭みを抑えたクセのないスープを大量に提供できるため、都市部での屋台スタイルにぴったりでした。「バリカタ」や「粉落とし」といった細かい茹で加減の指定も、少しでも早く食べたいというせっかちな気質から生まれた独自の文化です。
香ばしいニンニクが食欲をそそる「熊本ラーメン」
久留米生まれの白濁スープが南下して進化したのが「熊本ラーメン」です。伝播の重要な中継地点となったのが熊本県北部の玉名市でした。
海苔の養殖や土木作業で疲れた労働者に精をつけてもらおうと、スープに「焦がしニンニク」を振りかけたのが始まりです。
この味に衝撃を受けた若者たちが熊本市内に技術を持ち帰り、「こむらさき」や「味千」といった名店を創業しました。
熊本ラーメンは、ニンニクチップや焦がしニンニク油の「ブラックマー油」が特徴。麺はもっちりとした中太ストレート麺で、スープには鶏ガラをブレンドすることが多く、濃厚ながらも後味がすっきりマイルドに仕上がっています。
発祥の地で歴史を味わう!久留米のルーツを感じる名店

豚骨ラーメンの歴史を知った上で久留米を訪れるなら、絶対に外せない2つのレジェンド店をご紹介します。
南京千両 本家(すべてはここから始まった元祖の味)
1937年創業、日本初の豚骨ラーメン店のDNAを伝える歴史的なお店です。
ここで味わえるのは、今の私たちが想像するドロドロのラーメンとは違う、やや透明感を残したあっさりとしたスープ。豚骨の旨味を抽出しつつも脂っこくなく、滋味深い味わいです。「すべてはここから始まった」という歴史の重みを感じさせてくれる、至高の一杯です。
- 住所: 福岡県久留米市野中町1357-15
- 営業時間: 11:00~14:30
- 定休日: 水曜、木曜
- 代表メニュー: ラーメン(550円)
久留米 大砲ラーメン 本店(呼び戻しスープの代名詞)
1953年創業、久留米ラーメンのアイデンティティである「呼び戻し製法」を守り続ける名店です。
創業以来、一度も釜を空にすることなくスープを継ぎ足し続けており、旨味が幾重にも重なった重厚でクリーミーな味わいが楽しめます。
おすすめは、手作りの「カリカリ」が乗った「昔ラーメン」。屋台時代のこってりとした味わいを再現した一杯で、圧倒的な満足感を味わえます。
- 住所: 福岡県久留米市通外町11-8(五穀神社前)
- 営業時間: 10:30~21:00
- 定休日: 元日
- 代表メニュー: 昔ラーメン(830円)、食べくらべセット
とんこつラーメンの起源を知ってさらに美味しく味わおう

「とんこつラーメン=博多」というイメージは、ラーメンが全国展開していく中で定着した後発的なものであり、真のルーツは福岡県久留米市にありました。
透明なスープから始まり、火加減の失敗から偶然生まれた白濁スープ。それが「呼び戻し」という技法を生み、長浜では「極細麺と替え玉」、熊本では「ニンニクとマー油」というように、その土地の人々の生活に寄り添って進化を遂げてきました。
たった一杯のどんぶりの中には、名もなき店主たちが積み重ねてきた試行錯誤の歴史が詰まっています。次に豚骨ラーメンを食べる時は、スープの白さや麺の細さの背景にあるドラマをぜひ思い出してみてください。いつもの一杯が、もっと味わい深く感じられるはずです。
中本に人生を捧げた『ただの客』が、歩んできた中本道
蒙古タンメンのファンサイトである「蒙古タンメン中本の道」を運営する、中本のマニアであり「ただの客」であるづけとご。そんな「ただの客」が中本に魅了され、週5日以上もお店に通うほどに、中本に人生を捧げたきっかけやホットな偏愛エピソードを紹介していく。これを読み終えたころには、きっとあなたも蒙古タンメンのことが頭から離れられなくなるかも!?
参考
- 日本三大ラーメンとは!? | ニッポン旅マガジン
- 大名の「元祖赤のれん」で博多豚骨ラーメン|1946年創業の庶民の味を守る名店 - Kinoko Blog
- 博多ラーメン(赤のれん)|福岡市中央区 - 早良風土記
- 《其の十五》文化遺産級の屋台「南京千両」の未来を久留米ラーメン会と共に考えてみた - Qualities
- 久留米ラーメン とんこつラーメン発祥の味 | たびらい福岡
- 全国ご当地ラーメン - 久留米ラーメン - ラーペディア - 新横浜ラーメン博物館
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- ラーメン史コラムvol.11
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