【完全版】顧問とは?役割や相談役・役員との違い、契約形態・報酬相場を徹底解説
- 1. 顧問とは?基礎知識と会社法上の位置づけ
- 1.1. 顧問の定義と主な役割
- 1.2. 会社法における顧問の位置づけ(法的な権限・責任)
- 2. 顧問と似た役職・肩書きとの違い
- 2.1. 「相談役」との違い
- 2.2. 「役員(取締役・監査役)」との違い
- 2.3. 「執行役員」との違い
- 2.4. 「参与」「フェロー」との違い
- 3. 顧問の2つの主な種類(内部顧問・外部顧問)
- 3.1. 内部顧問(自社の元役員・退任者など)
- 3.2. 外部顧問(特定の専門スキルを持つプロフェッショナル)
- 3.3. 【補足】弁護士や税理士などの「士業顧問」
- 4. 企業が顧問を設置・契約するメリット・デメリット
- 4.1. 企業側のメリット
- 4.2. 企業側のデメリット
- 5. 顧問の契約形態と報酬相場
- 5.1. 業務委託契約(委任契約・準委任契約)の特徴
- 5.2. 雇用契約の特徴
- 5.3. 顧問の報酬相場(目安)
- 6. 優秀な外部顧問の探し方・選び方
- 6.1. 顧問紹介サービス(マッチングサービス)の活用
- 6.2. 知人・ネットワーク(リファラル)からの紹介
- 6.3. 顧問選びで失敗しないためのポイント
- 7. 自社の課題や目的に合った顧問を活用しよう
- 8. 参考
顧問とは?基礎知識と会社法上の位置づけ

「顧問」という肩書きはビジネスシーンでよく耳にしますが、その正確な役割や法的な位置づけについて、意外と曖昧なまま運用されているケースは少なくありません。ビジネスのスピードが加速し、経営の多角化が求められる今、外部や内部の知見をどう活用するかが企業成長の鍵を握っています。まずは、顧問の基本的な定義と、法的な権限や責任の所在について整理しておきましょう。
顧問の定義と主な役割
顧問とは、経営課題や専門的な問題に対して、自身の高度な知識や経験をもとに、経営陣や現場の責任者へ指導・助言を行う役職や専門家のことです。
企業が顧問を置く一番の理由は、社内のリソースだけでは解決が難しい課題に対して、外部(あるいは内部)の卓越した知見をスピーディに取り入れるためです。テクノロジーの進化やグローバル化でビジネス環境が激変する中、新規事業の立ち上げ、DX推進、M&Aといった高度な専門性が求められる場面は日常茶飯事になっています。
たとえば、起業したばかりの会社や、全く新しい領域へ参入しようとしている会社の場合、「ターゲット層への人脈がない」「商談設定のノウハウがない」といった実務的な壁にぶつかることがよくあります。そんな時、その業界に太いパイプと知見を持つ専門家を顧問に迎えることで、経営戦略がクリアになるだけでなく、実際の商談機会の創出といった直接的な支援を受けることができます。
顧問は、自ら意思決定して組織を引っ張るリーダーというよりは、経営陣の意思決定を客観的かつ専門的な立場から「支援」し、事業成長を後押しする強力なサポーターと言えます。
会社法における顧問の位置づけ(法的な権限・責任)
実は、顧問という役職は会社法などの法律で明確に規定されているものではありません。そのため、原則として業務を執行する権限や、会社を代表する法的な権限を持たないのが大きな特徴です。
権限がないということは、顧問が単独で他社と契約を結んだり、従業員に直接業務命令を出したりすることはできないということです。ここは取締役などの「役員」とは決定的に違います。しかし、権限がないからといって、法的責任が一切生じないわけではありません。
顧問契約が民法上の「委任契約」や「準委任契約」として結ばれている場合、顧問には「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」が発生します。これは、専門家として当然期待されるレベルの注意を払って業務を行わなければならないというルールで、これに違反して会社に損害を与えた場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。
また、経営陣や人事担当者が気をつけるべき法的リスクとして、会社法第354条の「表見代表取締役」の問題があります。これは、実際には代表権がない人に対して、会社が「社長」や「副社長」といった、いかにも会社を代表しているような肩書きを使わせた場合、それを信じて取引した相手(善意の第三者)を保護するために、会社が責任を負わなければならないという制度です。
顧問自身は取締役ではないことが多いので、この条文が直接当てはまることは稀です。ただ実務上、ブランディングのために外部顧問に「最高技術責任者(CTO)」や「会長待遇」といった重い対外的な肩書きを与え、社印まで持たせるような運用をしていると、この法律が類推適用され、会社が思わぬ損害賠償責任を負うリスクがあります。名刺の肩書き一つとっても、法的なリスク管理は欠かせません。
顧問と似た役職・肩書きとの違い

日本の企業には、顧問以外にも「相談役」「役員」「執行役員」「参与」といった似たような肩書きがたくさんあります。これらを混同してしまうと、誰の指示に従えばいいのか分からなくなり、ガバナンスが低下する原因になります。ここでは、それぞれの違いを役割や権限、契約形態の観点から整理します。
「相談役」との違い
顧問と相談役の決定的な違いは、「実務的な専門アドバイス」を求めるか、「大所高所からの精神的・大局的なアドバイス」を求めるか、という点です。
相談役は、社長や会長を長年務めて退任した功労者が就く「名誉職」の色合いが強い役職です。顧問が「海外法人の設立ノウハウ」といった具体的な実務課題のために呼ばれるのに対し、相談役は、現経営陣が大きな方向性に迷ったときに過去の経験から大局的な助言を行うのがメインの役割です。財界活動など企業の顔としての役割を担うことも多く、外部の専門家が相談役に呼ばれることは滅多にありません。
「役員(取締役・監査役)」との違い
役員は会社法上の「機関」として法的な意思決定権と業務執行権限を持っていますが、顧問にはそれが一切ありません。
取締役や監査役は株主総会で選ばれ、会社の業務執行の意思決定をしたり(取締役)、その職務を監査したり(監査役)する権限を持ち、会社に対して重い法的責任を負います。一方の顧問は、あくまでアドバイスをするサポート役であり、取締役会での議決権も持ちません。
たとえば、数億円規模の新規事業の予算を最終承認できるのは役員だけです。顧問は「市場動向から見て投資価値が高い」とデータに基づいた強い推薦はできても、最終的な決裁は下せません。
「執行役員」との違い
執行役員は、取締役会が決めた方針に従って現場の業務執行を統括・指揮する責任者ですが、顧問は現場への直接的な指揮命令権を持ちません。
執行役員制度は、「経営(意思決定)」と「執行(現場の業務推進)」を分ける目的で多くの企業に導入されています。執行役員は営業本部長などのトップとして従業員に指示を出し、人事評価も行います。しかし顧問は、その営業本部長に対して「こんな戦略が良い」とアドバイスする立場であり、現場の担当者に直接命令することは指揮命令系統のルール違反となります。
「参与」「フェロー」との違い
参与やフェローは主に企業と「雇用契約」を結んでいる社内の従業員ですが、顧問は「業務委託契約」による外部のプロフェッショナルであることが多いです。
参与は、一般的に「役員に次ぐ高い役職(部長や本部長クラス)」として設定される社内のポジションです。フェローは、研究開発などの分野で極めて高い専門性を持つ社内の優秀な技術者や研究者に与えられる称号で、マネジメント業務を免除されることが多いです。
参与やフェローが自社の従業員であるのに対し、顧問(特に外部顧問)は他社の元役員やフリーランスの専門家が、週に数日だけ関わるといった独立したスタイルをとります。
顧問の2つの主な種類(内部顧問・外部顧問)

顧問は、その人の出身や所属の形によって大きく「内部顧問」と「外部顧問」に分かれます。自社の状況に合わせてどちらを選ぶべきかが変わるため、それぞれの得意な領域を把握しておきましょう。
内部顧問(自社の元役員・退任者など)
内部顧問は、自社の社長や役員を退任した人、あるいは定年退職した専門知識を持つ元従業員などが就く形です。
内部顧問を置く最大のメリットは、長年培った自社独自のノウハウや、重要顧客との深い関係性をそのまま引き継げることです。自社の歴史や企業文化、複雑な人間関係まで知り尽くしているため、新任の経営陣へのスムーズな引き継ぎや、社内トラブルの際の仲裁役として頼りになります。
ただ気をつけるべきは、かつての上下関係がそのまま組織に残ってしまい、現経営陣が内部顧問に忖度してしまうリスクがあることです。事実上の「院政」になって意思決定が遅れることがないよう、役割の範囲や契約期間をあらかじめ明確にしておく必要があります。
外部顧問(特定の専門スキルを持つプロフェッショナル)
外部顧問は、これまで直接の雇用関係がなかった外部の有識者や専門家を、スポットや継続的に招き入れる形です。
最大の魅力は、自社にはない最先端の知見や、異業種での成功体験、幅広い人脈をダイレクトに事業に注入できることです。顧問紹介サービスなどを利用すれば、自社の課題にピンポイントで合う専門家を見つけることができます。
たとえば、アナログな営業を続けてきた老舗企業が、IT業界で実績のあるエンジニアを外部顧問に招いてDXを一気に進める、といったケースです。外部顧問は社内のしがらみがないため、経営陣に対して客観的で耳の痛い意見もはっきりと言ってくれる貴重な存在です。最近では、特定のプロジェクト期間だけ外部顧問を活用する企業も増えています。
【補足】弁護士や税理士などの「士業顧問」
外部顧問の中でも特殊で代表的なのが、弁護士、税理士、社労士などの国家資格を持つ「士業顧問」です。
士業顧問は、コンプライアンスの徹底や税務・労務などの法定業務を正しく処理するために契約します。会社を致命的な法的リスクから守る「防波堤」としての役割が強く、事業を安全に運営するための「守りの要」として、企業規模を問わず欠かせない存在です。
企業が顧問を設置・契約するメリット・デメリット

顧問の活用は企業の成長を加速させる強力な手段ですが、運用次第ではコストばかりかかって社内が混乱するリスクもあります。メリットとデメリットの両面をしっかり理解しておくことが大切です。
企業側のメリット
本質的なメリットは、「時間とリソースのショートカット」に尽きます。
- 即戦力となる高度な専門知識の獲得
自社にノウハウがない新規事業や最新テクノロジーの導入において、ゼロから手探りで進める時間を大幅にカットできます。 - 幅広いネットワークへのアクセス
顧問が長年培ってきた人脈を使わせてもらうことで、通常の営業では到底アプローチできない大企業のキーマンとの商談設定などが可能になり、販路拡大が一気に進みます。 - 採用コストの削減と柔軟な費用調整
優秀な人材を正社員としてフルタイムで雇うには莫大なコストがかかりますが、業務委託の顧問契約なら社会保険料などの負担がありません。必要な時期に必要なだけ稼働してもらうなど、柔軟に調整できるため非常にコストパフォーマンスが高いです。
企業側のデメリット
一方で、以下のようなリスクへの対策も必要です。
- 期待値のズレによるコストの無駄打ち
過去の輝かしい実績や有名企業の肩書きだけで選んでしまうと、自社の泥臭い現場の課題とマッチしないことがあります。高い顧問料を払ったのに何も成果が出ない、という事態になりかねません。 - 社内メンバーとの軋轢(ハレーション)
外部から来た顧問が自社の社風を理解せず、高圧的な態度をとったり現場を無視した理想論を語ったりすると、既存の社員との間に摩擦が起きます。これが原因で社員のモチベーションが下がったり、最悪の場合はキーマンが辞めてしまうこともあります。 - 情報漏洩のリスク
顧問は経営の根幹に関わる機密情報に触れる機会が多くなります。外部顧問は他社の顧問を兼任していることも多いため、秘密保持契約(NDA)をしっかり結び、情報のアクセス権限を厳重に管理する体制が必須です。
顧問の契約形態と報酬相場

顧問を迎える際、どんな契約を結び、いくら払うべきかは非常に重要なテーマです。契約形態を間違えると、後々トラブルに発展する可能性があります。
業務委託契約(委任契約・準委任契約)の特徴
現在の顧問契約(特に外部顧問)で主流なのが「業務委託契約」です。これは企業(委託者)と顧問(受託者)が対等なビジネスパートナーとして結ぶ契約です。顧問は働き方や作業環境に縛られず自由に業務を進められますが、その分、労働基準法で守られることはなく、トラブルの責任も原則として顧問自身が負うことになります。
特に、経営や営業の顧問の場合、「売上を絶対に上げる」といった最終結果を100%保証するのは難しいため、専門知識を提供してアドバイスをするという「行為そのもの」に対して報酬を支払う「準委任契約」を結ぶのが一般的です。
雇用契約の特徴
内部顧問や、週5日フルタイムで常駐して現場を直接指揮するような顧問の場合は、「雇用契約」や嘱託社員としての契約を結ぶことがあります。この場合、企業は強い指揮命令権を持ちますが、業務上の過失に対する責任(使用者責任)も負い、社会保険への加入なども義務付けられます。ただ、外部の専門家に細かく指示を出すのはパフォーマンスを下げる原因にもなるため、外部顧問と雇用契約を結ぶケースはあまり多くありません。
顧問の報酬相場(目安)
報酬は、その人の専門性の高さや稼働頻度によって大きく変わります。支払い形態も、毎月一定額を払う「月額顧問契約」、目標達成までの「プロジェクト単位」、結果に応じた「成果報酬制」、固定費と成果報酬を合わせた「混合型」など様々です。
- 内部顧問(元役員など)の相場
現役時代の役員報酬の30%〜50%程度に設定されることが多く、勤務日数によって調整されます。 - 外部顧問(ビジネス専門家)の相場
- 月1〜2回の会議参加やオンライン相談:月額10万円〜30万円程度
- 実務的な支援(営業同行やプロジェクトへの直接介入など):月額30万円〜50万円以上
- 営業顧問(成果報酬):アポイント1件につき1万〜5万円、成約時に売上の数%などを設定する混合型が多い傾向にあります。
顧問に「壁打ち相手」を求めているのか、それとも「実務を動かすプレイングマネージャー」を求めているのかを明確にし、それに合わせた契約を設計することが大切です。
優秀な外部顧問の探し方・選び方

自社の課題を解決してくれる優秀な外部顧問を見つけ出すのは簡単なことではありません。ここでは、探し方のルートと選定時に失敗しないポイントを解説します。
顧問紹介サービス(マッチングサービス)の活用
今、最も主流なのが顧問紹介サービスです。企業が抱える課題に合わせて、独自のデータベースからぴったりな専門家を紹介してくれます。
手数料はかかりますが、ただ人材を紹介してくれるだけでなく、面倒な契約書の作成や毎月の報酬管理を代行してくれたり、トラブル時の間に入ってくれたりと、企業側の負担やリスクを大きく減らしてくれるというメリットがあります。サービスを選ぶ際は、自社の求める専門人材が多く登録しているか、サポート体制は充実しているかなどをしっかり比較検討しましょう。
知人・ネットワーク(リファラル)からの紹介
取引先の経営者や既存の役員などからの紹介(リファラル)も有効な手段です。紹介者の信頼があるため、人物面でのミスマッチが起きにくく、仲介手数料もかかりません。
ただ、候補者が限られるため自社の課題に完璧にマッチするとは限りません。また、もし期待通りの活躍をしてくれなかった場合、「紹介者の手前、契約を切りづらい」という人間関係のしがらみが生まれるリスクがあるため、紹介であっても客観的な評価基準を持つことが大切です。
顧問選びで失敗しないためのポイント
- 自社の課題を明確にする:「とりあえず優秀な人を入れて売上を上げたい」というようなフワッとした理由では失敗します。「この業界へのアプローチ方法を知りたい」など、具体的な課題を言語化しましょう。
- 定量的目標の設定:「いつまでに・何件の商談を獲得する」といった数値目標を最初に取り決め、パフォーマンスを客観的に評価できるようにします。
- 綿密な面談:経歴書だけでなく、面談で「自社の社風に合うか」「上から目線ではなく、一緒に伴走してくれるスタンスか」をしっかり見極めます。
自社の課題や目的に合った顧問を活用しよう

顧問は、高度な専門知識と幅広いネットワークを活かして、企業の経営課題をサポートしてくれる非常に心強い存在です。取締役のような法的な権限を持たないからこそ、社内のしがらみに囚われず、客観でフラットなアドバイスができるのが最大の強みです。
ビジネスの先行きが読みにくい今の時代、必要な期間だけ、必要な分野に絞って外部のプロフェッショナルと「準委任契約」を結ぶような流動的なスタイルがスタンダードになりつつあります。正社員を採用・育成するコストと時間をショートカットし、即戦力として自社の成長エンジンに組み込めるのは大きな魅力です。
一方で、期待値のズレや社内での摩擦、情報漏洩といったリスク、名刺の肩書き運用による思わぬ法的責任には十分注意が必要です。導入前に自社の課題と目標を明確にし、必要に応じてマッチングサービスや専門家のサポートも活用しながら、自社の事業フェーズに完璧にフィットする顧問を戦略的に迎え入れてください。




