「追っかけ」とは?意味やファン・推し活との違いから、心理・マナーまで徹底解説

「推し活」という言葉が日常に浸透した今、改めて「追っかけ」という言葉の意味や、どこからが迷惑行為になるのか疑問を持つ人が増えています。

「好きなタレントを応援したいけれど、これは追っかけになるの?」

「昔の親衛隊と今の推し活は何が違うの?」

本記事では、明治時代から続く「追っかけ」の意外な歴史から、現代の推し活ブームにおける位置づけ、そして知っておくべきマナーと法的リスクまでを網羅的に解説します。熱狂的なファン心理を理解し、健全に応援を楽しむためのガイドラインとしてお役立てください。

「追っかけ」とはどういう意味?

辞書的な意味と定義

「追っかけ」とは、一般的に「特定の芸能人や著名人のファンが、その対象の行く先々を追いかけて回る行為、またはその人自身」を指します 。

単にコンサートやイベントに参加するだけでなく、テレビ局の入り口、移動中の駅や空港、場合によっては宿泊先など、公式にパフォーマンスが行われる場所以外(オフショットの場)まで追いかける点が最大の特徴です。英語圏では「Groupie(グルーピー)」と訳されることが多いですが、日本の追っかけは肉体関係よりも「視認すること」「認知されること」を重視する傾向にあります。

言葉の語源と歴史

この言葉の起源は古く、1892年(明治25年)まで遡ります。当時の新聞には、役者や寄席芸人が乗る人力車の後を追いかける学生たちの集団を「追駆連(おっかけれん)」と呼び、嘆く記事が掲載されていました 。驚くべきことに、彼らは現在の価値にして数十万円もの大金をこの活動に費やしており、生活を犠牲にして対象を追うスタイルは130年以上前から存在していたのです。

その後、1970年代〜80年代のアイドルブームにおける「親衛隊」、90年代以降のジャニーズ(現STARTO)文化における高度に組織化された追っかけシステムを経て、現代のSNSを駆使したスタイルへと変遷してきました。

「追っかけ」と「ファン」「推し活」の違い

一般的な「ファン」との違い

最大の違いは、「公式が提供する場(ステージ)で満足するか、その外側(バックステージ)まで求めるか」です。

一般的なファンは、チケットを購入してコンサートに行き、作品を購入して楽しみます。対して追っかけは、移動中の姿や私服姿など、本来見せない部分を見るために物理的な移動と待機を行います。

以下に、それぞれの違いを詳しく比較しました。

比較項目ファン 推し活 追っかけ
定義・本質対象を支持し、作品を楽しむ人応援を生活の一部として楽しむ活動全般物理的な居場所を追い求め、接触を試みる人
主な行動範囲自宅、近隣の会場、CDショップカフェ、聖地巡礼、SNS、ライブ参加出待ち、入り待ち、移動車両の追跡、全通、宿泊先特定
対象との距離感「鑑賞者」対「演者」「応援する自分」を楽しむ「個」対「個」(認知されたい、近づきたい)
活動場所公式の場(会場、店舗)公式の場+個人の生活空間公式外の場(路上、駅、空港、楽屋口)
心理的動機「作品が好き」「感動したい」「生活の張り」「成長を見守りたい」存在を認知されたい」「私生活を知りたい」「独占したい」
費用とリソース趣味の範囲内可処分所得の多くを充てる生活費を削る、借金、時間を全て捧げる

現代の「推し活」との境界線

近年流行している「推し活」は非常に広い意味を持ちます。カフェでグッズの写真を撮ることも、全公演に参加する(全通)ことも推し活の一部としてポジティブに捉えられます。

しかし、境界線は「相手(推し)のプライベートや移動の自由を侵害していないか」にあります。たとえ「推し活」と称しても、許可のない場所での出待ちや、新幹線での付きまとい行為を行った時点で、それはマナー違反の「追っかけ(あるいはヤラカシ)」とみなされます。

追っかけは具体的に何をするのか?

「入り待ち」「出待ち」

タレントが現場(テレビ局、劇場、コンサート会場)に入る時や、出てくる時を狙って待ち伏せする行為です。

一部の歴史あるファンコミュニティ(旧ジャニーズの「オリキ」など)では、事務所公認のエリアで整列して手紙を渡すなどのルール(通称「受け」)が存在する場合もありますが、基本的には多くの事務所が禁止している行為です。路上での無許可の出待ちは近隣への迷惑となります。

移動手段の同乗(新幹線・飛行機)

タレントが利用する新幹線や飛行機の便を特定し、同じ車両や便を予約する行為です。

  • 新幹線の追っかけ: 同じ車両のデッキに居座ったり、ホームで覗き込んだりする行為は「積み」「かぶり」などと呼ばれ、一般客への多大な迷惑となるため厳しく禁止されています 。
  • 空港での待ち伏せ: 特にK-POPアイドル等の来日時に見られ、空港ロビーを占拠してパニックを引き起こす原因となっています。

地方・海外遠征

ツアーの全公演に参加するために、全国各地や海外までついて回ることを「全通(ぜんつう)」と呼びます。これは公式のチケットを購入して参加する限りは「熱心なファン」の範疇ですが、移動中の追跡を伴う場合は「追っかけ」となります。交通費と宿泊費で年間数百万円を費やすケースも珍しくありません。

なぜそこまで?追っかけをする人の心理

「認知」されたい欲求

多くの追っかけファンを突き動かすのは、「その他大勢のファン」から抜け出し、「個」として認識されたいという強烈な承認欲求です。

「目が合った」「自分のことを覚えてくれている」という感覚は、脳内で強い快楽物質(ドーパミン)を分泌させます。この快感を得るために、より近くへ、より頻繁に会いに行こうとする行動が強化されます。

推しとの一体感・共有体験

「推しと同じ時間を過ごしている」「同じ空気を吸っている」という事実に深い意味を見出します。

アイドルには宗教的な側面があり、偶然同じ場所に居合わせたり、ハプニングを共有したりすることは、ファンにとって「奇跡」や「運命」と感じられます 。この没入感は、日常生活のストレスや不安を忘れさせてくれる強力な精神的避難場所となります。

コミュニティへの帰属意識

現場に通い詰めるファン同士の間には、独自の連帯感が生まれます。

「誰よりも詳しい情報を持っている」「現場のルールを知っている(仕切っている)」という立場は、コミュニティ内でのステータスとなり、自己重要感を満たしてくれます。仲間との絆が、追っかけを辞められない理由の一つになることもあります。

【重要】追っかけのマナーと法的リスク〜迷惑行為との境界〜

事務所や公式が禁止する「NG行為」

各芸能事務所(STARTO、LDH、HYBEなど)は、以下のような行為を明確に禁止しています。

  • 公共交通機関での待ち伏せ・並走: 駅や空港でタレントを取り囲む、新幹線の車内を覗き込む行為。
  • 盗撮・盗聴: 許可のない場所での撮影、録音。
  • プライベートの侵害: 自宅や実家の特定、家族への接触。
  • 公式外での出待ち: 事務所周辺や稽古場などでの待ち伏せ。

芸能人が感じる恐怖と「やらかし」

ルールを守らない悪質なファンは「ヤラカシ」や「サセン(私生ファン)」と呼ばれます。

彼らは「嫌われてもいいから記憶に残りたい」という歪んだ心理(嫌われ認知)を持つことがあり、タレントに暴言を吐いたり、わざとぶつかったりすることさえあります。これはタレントにとって恐怖でしかなく、精神的苦痛により活動休止に追い込まれるケースもあります。

ストーカー規制法との関係

2021年の法改正により、追っかけ行為に対する規制は非常に厳しくなりました。

  • GPS機器の使用禁止: タレントの車にGPSをつけたり、アプリで位置情報を取得する行為は違法です。
  • 場所の拡大: 自宅や職場だけでなく、「立ち寄り先(店舗や美容室など)」での待ち伏せも規制対象となりました。
  • 連続した連絡: SNS等で拒絶されているのにメッセージを送り続けることもストーカー行為とみなされます。

これらに違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金などが科せられる犯罪となります 。

追っかけを辞めたい・卒業したい人へ

生活への支障とバランス

「生活費を削ってチケット代にする」「仕事を休んで遠征する」といった状態が続くと、経済的・社会的に破綻するリスクがあります。

専門家は、まず家計簿アプリなどで「推し活に使っている総額を可視化」することを推奨しています。自分がどれだけのリソースを費やしているかを客観視することが、冷静さを取り戻す第一歩です。

健全な「お茶の間ファン」への移行

追っかけを辞めることは、ファンを辞めること(推しじまい)だけではありません。

現場に行かずに自宅で作品を楽しむ「お茶の間ファン」に戻るという選択肢もあります。SNSの通知をオフにし、物理的な距離を置くことで、義務感や強迫観念から解放され、純粋に「好き」という気持ちを取り戻せる場合も多いです。

おわりに

「追っかけ」は、明治時代から続く日本独自のファン文化の一つであり、その熱量は文化を支える力にもなってきました。しかし、その情熱が行き過ぎて相手のプライベートを侵害すれば、それはもはや応援ではなく暴力となります。

「推しの生活と権利を尊重する」

これこそが、現代の推し活における最低限のマナーであり、最大の愛情表現です。ご自身の生活とバランスを取りながら、健全で楽しいファンライフを送ってください。

参考

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-偏愛が気づかせる、私たちの見えていなかった世界-

なぜだか目が離せない。
偏った愛とその持ち主は、不思議な引力を持つものです。
“偏”に対して真っ直ぐに、“愛”を注ぐからこそ持ち得た独自の眼差し。
そんな偏愛者の主観に満ちたピントから覗かれる世界には、
ウィットに富んだ思いがけない驚きが広がります。
なんだかわからず面白い。「そういうことか」とピンとくる。

偏愛のミカタ PinTo Times