お薬手帳界隈とは?無機質な「A6ノート」が100均と推し活で「最強の装備」に化ける理由

この記事でわかること

  • 無機質な「お薬手帳」が、なぜ若者の間で「推し活」のキャンバスになっているのか
  • なぜ「A6サイズ」なのか? 規格が生んだ奇跡的なシンデレラフィットの謎
  • 100均(ダイソー・セリア)のアイテムを活用して「自分だけの聖域」を作る方法
  • 病院という不安な場所で「推し」を持ち歩く心理的メリットと、守るべきマナー

病院の待合室に漂う空気は、どこか独特な重力を持っています。消毒液の鋭い匂い、名前が呼ばれるのを待つ人々の沈黙、硬質な長椅子、そして壁に貼られた健康啓発のポスター。私たちの五感は、その空間に入った瞬間から「管理される客体」としての自分を意識させられます。そこは、色彩が抑制され、機能性と清潔さのみが追求された、ある種の無機質な真空地帯と言えるでしょう。

しかし、近年、この灰色の風景の中に、小さな、しかし強烈な色彩の「バグ」が発生しているのをご存知でしょうか。

調剤薬局のカウンターで、隣に座った若い女性が薬剤師に差し出した手元を、少しだけ注意深く観察してみてください。彼女がバッグから取り出したのは、私たちがよく知る、あの事務的な青や緑の薄っぺらい冊子ではありません。表紙にはホログラムが煌めき、愛らしいアニメキャラクターや、韓流アイドルの笑顔がこちらを見つめています。あるいは、精緻なレースやリボンで縁取られ、まるで中世の魔導書か、魔法少女の変身アイテムのような様相を呈していることさえあります 2

「今日のお薬ですね、確認します」

薬剤師は何事もないようにその「聖典」を受け取り、バーコードを読み取ります。このシュールな光景こそが、現在SNSを中心に急速に拡大し、静かな熱狂を生んでいる「お薬手帳界隈」の現場です。

なぜ、病気や怪我というネガティブな記録が刻まれる医療文書を、これほどまでに熱心にデコレーションするのでしょうか。単なる「映え」や流行の一種として片付けるのは早計です。そこには、規格化された医療・行政に対する、個人のささやかな抵抗と、不安な現代を生き抜くための切実な「生存戦略」が隠されているからです。

本レポートでは、この「お薬手帳界隈」という現象を、単なるDIYのハウツーとしてではなく、「A6」という規格の魔術、100円ショップという現代のブリコラージュ(器用仕事)の現場、そして「推し」を医療現場に持ち込む心理的安全性という多角的な視点から解剖します。

「お薬手帳界隈」の正体と、奇跡の「A6規格」

デコレーションされる医療記録

まず、「お薬手帳界隈」の定義と実態について整理します。これは、本来、服用歴やアレルギー情報を記録するための公的な冊子である「お薬手帳」を、自分の好きなアイドル、キャラクター(推し)、あるいは自分好みのデザインでカスタマイズし、その写真をSNS(主にXやInstagram、TikTok)に投稿したり、実際に医療機関で運用したりするコミュニティや文化のことを指します。

SNS上では #お薬手帳界隈 #お薬手帳デコ #推し活 といったハッシュタグと共に、数多くの作品が投稿されています。そのスタイルは多岐にわたりますが、大きく以下の3つの系統に分類できます。

スタイル特徴主な使用アイテム
コラージュ型表紙の画用紙に推しの切り抜き、フレークシール、素材紙を幾重にも重ね、独自の世界観を作り込む。画用紙、フレークシール、マスキングテープ、デザインペーパー
着せ替え型既存の表紙の上に、好みの包装紙や特典のポストカードを重ね、クリアカバーで保護するシンプルかつ再利用可能なスタイル。ポストカード、クリアカバー、包装紙(ウィリアム・モリス柄など)
祭壇・収納型診察券や保険証だけでなく、推しのアクリルスタンド(アクスタ)やトレーディングカード(トレカ)を一緒に収納し、持ち歩ける「祭壇」とする。6リングバインダー、ジッパーケース、専用リフィル

興味深いのは、これが単なる「文房具のデコレーション」とは異なり、「自分の健康情報」という極めてプライベートかつ、生命に関わる情報とセットになっている点です。本来、隠しておきたい、あるいは直視したくない「病気である自分」という事実に、あえて「推し」という最高のポジティブ要素を融合させる。この清濁併せ呑むような矛盾した行為こそが、この界隈の核心的なダイナミズムを生んでいます。

シンデレラフィットという名の「構造的発見」

なぜ、他の手帳(スケジュール帳や家計簿)ではなく、あえて「お薬手帳」だったのでしょうか? その最大の理由は、お薬手帳が持つ物理的な「サイズ」**という構造的要因にあります。

日本国内で流通しているお薬手帳の多くは、A6サイズ(105mm × 148mm)です。これはA4用紙を2回半分に折ったサイズであり、文庫本と同じ大きさです。日本工業規格(JIS)で定められたこの「A6」という規格が、推し活文化において「奇跡」とも呼べる親和性を発揮したのです。これを界隈の言葉で「シンデレラフィット」と呼びます。

この「シンデレラフィット」がもたらす構造的な一致は、以下の表のように整理できます。

比較対象アイテムサイズお薬手帳(A6)との関係性
お薬手帳105mm × 148mm基準点(文庫本サイズ)
官製はがき・ポストカード100mm × 148mmほぼ完全一致。特典ポストカードがそのまま表紙になる。
L判写真(一般的写真)89mm × 127mm一回り小さい。台紙の中央に貼り、周囲をデコるのに最適な「余白」が生まれる。
トレーディングカード63mm × 88mmA6対応の2ポケットリフィルに上下2枚が美しく収まる。
A5サイズの手帳148mm × 210mmお薬手帳より大きく、持ち運びに不便。システム手帳の主流だが、お薬手帳には大きすぎる。

特筆すべきは、行政文書やビジネス文書の多くがA4やB5といった「鞄に入れるには大きく、威圧感のあるサイズ」であるのに対し、お薬手帳は唯一と言っていいほど「掌に収まる、文庫本サイズの公的記録」である点です。

もし、お薬手帳の標準規格がB5サイズであったなら、この文化はこれほど爆発的に普及しなかったでしょう。「はがき(コミュニケーションの媒体)」と「文庫本(物語の媒体)」と同じサイズであったことが、お薬手帳を単なる医療記録から「個人の物語を綴るメディア」へと変質させる素地を作ったのです。

ブリコラージュの作法:100均アイテムでハックする

「お薬手帳界隈」を語る上で欠かせないのが、ダイソー(DAISO)やセリア(Seria)、キャンドゥ(Can★Do)といった100円ショップの存在です。彼女たちの創造性は、高価な画材店ではなく、これら100均の棚の間で発揮されます。

これは、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースが『野生の思考』の中で提唱した「ブリコラージュ(Bricolage)」という概念で見事に説明がつきます。ブリコラージュとは、「あり合わせの道具や材料を用いて、自分の手で何かを作ること」を指します。エンジニアが設計図通りに専用の材料を調達して製作するのに対し、ブリコラージュは「手元にあるもの(本来の用途とは違うかもしれないもの)」を組み合わせて、新しい意味や機能を生み出します。

お薬手帳界隈の住人たちは、まさに現代のブリコルール(器用人)です。彼女たちは「事務用品」として売られているファイルを「推しの祭壇」へと読み替える能力を持っています。

ダイソーとセリアに見る「専用と汎用の境界線」

100均大手二社の製品は、それぞれ異なるアプローチでこの「ブリコラージュ」を支えています。

ダイソー:透明という名の「ショーケース」

ダイソーの強みは、その圧倒的な実用性と製品バリエーションの広さ、そして「透明度」にあります。特に「お薬手帳・診察券ケース」や「透明カバー」は、界隈の必須アイテム(神器)と化しています。

本来、これらは「表紙の汚れを防ぐ」「中身が見えるようにする」という実用目的で作られた製品です。しかし、ブリコルールであるユーザーたちは、この「透明性」を「ディスプレイ機能」として再解釈しました。

透明なカバーと手帳本体のわずかな隙間。そこは、推しの写真や切り抜きを挟み込むための「0.5ミリの展示室」となります。ダイソーの製品は、シンプルであるがゆえに、ユーザーの色彩を受け入れるためのキャンバスとして機能しており、その実直なまでの「透明」が、中の「推し」を輝かせるための黒子となっています。

セリア:オタ活への「過剰適応」と「6リングの革命」

一方、セリアのアプローチはより直接的かつ戦略的です。セリアは近年、「推し活(オタ活)」支援に大きく舵を切っており、メーカー「amifa(アミファ)」との協業による「カスタムノート」シリーズや、キャラクターがプリントされたお薬手帳ケースを展開しています。

特筆すべき革命は、「6リングバインダー」の導入です。

本来、システム手帳(バイブルサイズやA5)のギミックであったリングバインダーを、100円で提供することで、「お薬手帳をノートとして綴じる」のではなく「リフィルとしてファイルの一部に組み込む」という発想の転換を促しました。

セリアには「マイコレ」シリーズなど、缶バッジやアクリルキーホルダーを収納するための専用リフィルが豊富にあります。これらを医療用ファイルに転用することで、お薬手帳は「医療記録」から「推しのグッズ収納ファイル(兼、薬の記録)」へと変貌を遂げます。セリアの棚の前で、ユーザーは「これは診察券入れに使える」「これは処方箋の一時保管に使える」と、文具の意味を次々と書き換えていくのです。

Amifaのカスタムノートシリーズ(A5やバイブルサイズ)のリフィルを活用し、お薬手帳そのものをパンチで穴を開けて綴じ込む猛者も現れるなど、規格のハックは留まるところを知りません。

「作り方」ではなく「世界観の構築」

具体的な作成プロセスを見てみると、そこには単なる工作以上の「儀式」めいた側面が見えてきます。これは、既製品を消費するだけの行為とは一線を画す、自己表現のプロセスです。

一般的な作成手順(現代のブリコラージュのレシピ)は以下の通りです。

  1. 解体(Deconstruction):まず、既存のお薬手帳から、薬局で配られた無機質なビニールカバーを外します。これは「与えられたシステム」からの離脱を意味する最初のステップです。
  2. 採寸と選定(Selection):A6サイズの画用紙や、好みの包装紙を切り出します。セリアで人気の「ウィリアム・モリス」柄や、推しのイメージカラー(メンカラ)に合わせた素材が選ばれます。これが手帳の「新しい皮膚」となります。
  3. 配置(Collage):ここが最も重要な創造的工程です。推しの切り抜き、フレークシール、マスキングテープを配置します。ここで意識されるのは、色彩の統一感とリズムです。複数の素材を組み合わせ、意味の連なりを作ります。
  4. 聖別(Labeling):最後に「お薬手帳」という文字を貼り付けます。手書きではなく、テプラや印刷した文字を使うことで、既製品のような「公式感」を演出します。これにより、単なる落書き帳ではなく「公的な機能を持った私のアイテム」として再定義されます。
  5. 再構築(Reconstruction):新しい表紙を手帳本体に巻きつけ、その上から再び透明カバー(ダイソー等の製品)を装着します。これにより、デコレーションは保護され、実用的な耐久性を獲得します。

このプロセスにおいて、ユーザーは「薬局から与えられたシステムの一部」である手帳を一度解体し、自分の美意識で再構築することで、その所有権(オーナーシップ)をシステムから自分自身へと取り戻しています。

表紙とクリアカバーの間のわずかな隙間に、推しの写真やキラキラしたスパンコールを閉じ込める行為は、レヴィ=ストロースが述べたように、断片的な要素を組み合わせて全体としての意味を作り出す「構造と出来事の対話」そのものです 11。彼女たちは「お薬手帳」という堅苦しい構造の中に、「推しへの愛」という個人的で情熱的な出来事を組み込み、それらを調和させているのです。

なぜ「病院」に「推し」を連れて行くのか?

単に「可愛いから」という審美的な理由だけで、大人が公的な手帳をデコレーションするでしょうか? ここには、より深く、切実な心理的動機が存在します。病院という特殊な環境がもたらすストレスと、それに対抗するための心の防衛機制です。

不安な場所を「聖域」に変える心理

病院や薬局は、多くの人にとってストレスフルな場所です。待合室の白い壁、独特の匂い、痛みへの恐怖、検査結果を待つ間の将来への不安、そして孤独。「白衣高血圧」という言葉があるように、医療機関にいるだけで身体的緊張が高まる人は少なくありません。

ここで機能するのが、心理学でいう「移行対象(Transitional Object)」としての推しグッズです。

イギリスの小児科医ドナルド・ウィニコットが提唱した「移行対象」は、幼児が母親から離れる際の分離不安を埋めるために肌身離さず持つ毛布やぬいぐるみ(いわゆる「ライナスの毛布」)のことを指します。

かつては「成長と共に手放すべきもの」と考えられてきましたが、近年の研究では、大人にとってもこの移行対象がストレス緩和、不安の軽減、そして感情調整(セルフ・スーシング)に極めて有効であることが再評価されています。

お薬手帳界隈において、デコレーションされた手帳は、まさに大人のための「ライナスの毛布」として機能します。

待合室という、アウェイで不安な空間(マイナスの場所)に、推しという絶対的な味方(プラスの感情)を持ち込むこと。手帳を開けば、そこには自分に向けて微笑む推しがいます。この視覚的刺激は、脳内でオキシトシン(安心ホルモン)の分泌を促し、コルチゾール(ストレスホルモン)を抑制する効果が期待できます。

「推し活」がメンタルヘルスに与えるポジティブな影響として、自己肯定感の向上やストレス解消が挙げられますが、病院という「弱っている自分」が露呈する場所においてこそ、その効力は最大化されます。

また、推しの写真を飾ることで、自分自身のアイデンティティを保つ効果もあります。診察室では、人は「患者」という受動的な役割、あるいは単なる症例として扱われがちです。しかし、推しで飾られた手帳を胸に抱いている間、その人は「患者」であると同時に、「○○(推し)を愛する一人のファン」としての主体的な自分を維持できます。「病気の自分」ではなく「推しを愛する自分」として振る舞うための、変身アイテムあるいは「お守り」として、お薬手帳は機能しているのです。

お守りとしての「物理メディア」

現在、マイナンバーカードへの保険証機能統合や、お薬手帳のアプリ化(電子お薬手帳)が政府主導で進められています。利便性やデータ連携の観点だけを考えれば、スマホ一つで完結する電子版の方が合理的であることは間違いありません。

しかし、お薬手帳界隈の盛り上がりは、「物理メディア(モノ)」への根源的な渇望を示唆しています。

スマホの中の画像は、電源が切れれば消えてしまいますし、通知が来れば現実に引き戻されます。アプリの画面は、あくまで「情報」の表示端末に過ぎません。

一方、デコレーションされた紙の手帳は、バッテリー切れもなく、質量と手触りを伴ってそこに存在し続けます。100均のカバーのツルツルした手触り、紙のページをめくる音、厚みを増していく処方記録。これら身体的な感覚を伴う「モノ」だからこそ、不安な時に物理的に「握りしめる」ことができ、支えとして認識されるのです。

心理学的に、触覚(タッチ)は安心感と密接に結びついています。ぬいぐるみを抱くことが不安を軽減するように、厚みのある「自分の手帳」を握りしめる行為は、デジタルデータには代替できない精神安定作用をもたらします。デジタル化が進めば進むほど、逆説的に「手元に残る、愛着を注げる物理的な記録」としての紙のお薬手帳の価値が高まっていると言えるでしょう。

お薬手帳を「編集」する際のマナーと注意点

ここまで、お薬手帳デコの文化的・心理的意義を肯定的に論じてきましたが、忘れてはならないのは、これが「医療システムの一部」であるという事実です。趣味の領域が公共のシステムと接触する境界線では、当然ながら摩擦が生じます。界隈を長く楽しみ、そして本来の目的である「適切な医療を受ける」ためにも、医療現場へのリスペクトとマナーが不可欠です。

情報の可読性と「公共性」の維持

SNS上では、現役の薬剤師や医療従事者からの「お願い」や「注意喚起」も散見されます。彼らの懸念は、単なる「見た目の派手さ」に対する拒否反応ではなく、医療安全上の合理的な理由に基づいています。

懸念事項具体的なリスク推奨されるマナー・対策
異物混入表紙のラインストーン、ラメ、ビーズ等が剥がれ落ち、調剤中の薬剤に混入する。誤飲の危険性もある。カバー必須。デコレーションは必ず透明カバーの「内側」に行う。外側に立体物を貼らない。落ちやすいラメは避ける。
情報の隠蔽デザインを優先し、氏名、生年月日、血液型、アレルギー情報、バーコード等を隠してしまう。情報は絶対に見せる。表紙の氏名欄は隠さない。マスキングテープは剥がせるものを使う。重要な医療情報はデコレーションしない。
耐久性と衛生過度な装飾で手帳が開きにくくなったり、汚れやすくなる。実用性の維持。ページがスムーズに開くようにする。アルコール消毒ができるビニール素材のカバーを使用する。

特に「異物混入」のリスクは深刻です。調剤室は清潔な環境が求められるため、ラメが散乱するような手帳は、薬剤師にとって「汚染源」に見えてしまいます。

「お薬手帳界隈」の賢明な住人たちは、こうした医療側の事情も理解した上で、システムをハックしています。「推しに恥をかかせない」という推し活特有の倫理観が、結果として「カバーをつけて異物混入を防ぐ」「情報はクリアに見せる」「薬剤師さんが扱いやすいようにする」というマナーの遵守に繋がっています。

真のブリコラージュとは、自分勝手に振る舞うことではなく、与えられた環境(医療システム)の制約を理解し、その中で最大限の自由を創出することにあるのです。

おわりに

お薬手帳界隈。一見すると、若者たちが医療用ノートを派手に飾り立てているだけの、一過性の奇妙な流行に見えるかもしれません。しかし、その背景を深く掘り下げていくと、そこには驚くほど豊かな構造と物語が広がっています。

そこには、A6という規格が生んだ偶然の奇跡(シンデレラフィット)があり、100円ショップという現代の資材置き場で繰り広げられる野生の思考(ブリコラージュ)があり、そして不安な医療空間で自己同一性を保とうとする切実な心理的防衛機制(移行対象)が働いています。

彼ら・彼女らは、病気や怪我というネガティブな出来事や、それを管理しようとする無機質な社会システムを、ただ受動的に受け入れることを拒否しました。その代わりに、100均のビニールと紙、そして推しという神様を召喚することで、冷たいシステムを温かな「自分の物語」へと書き換えているのです。それは、規格化された現代社会における、ささやかですが、極めて創造的な「生きるための知恵」と言えるでしょう。

もし明日、あなたが薬局や100円ショップを訪れることがあれば、文具売り場の「A6サイズ」のコーナーの前で足を止めてみてください。そして、そこで透明なケースやバインダーを真剣な眼差しで選んでいる人がいたら、想像してみてください。その人の手の中で、ただのビニールと紙が、不安な夜を越えるための「最強の装備」へと変わろうとしている瞬間を。

世界は、ほんの少しの工夫と想像力で、もっとカラフルで、愛おしい場所に変えることができる。お薬手帳界隈のピンクとブルーの輝きは、そんなことを私たちに教えてくれているのかもしれません。

次にあなたが薬局で自分の手帳を取り出すとき、その表紙に「あなた自身の物語」を重ねてみるのも、悪くない選択肢かもしれません。

参考

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-偏愛が気づかせる、私たちの見えていなかった世界-

なぜだか目が離せない。
偏った愛とその持ち主は、不思議な引力を持つものです。
“偏”に対して真っ直ぐに、“愛”を注ぐからこそ持ち得た独自の眼差し。
そんな偏愛者の主観に満ちたピントから覗かれる世界には、
ウィットに富んだ思いがけない驚きが広がります。
なんだかわからず面白い。「そういうことか」とピンとくる。

偏愛のミカタ PinTo Times