音楽家・常田大希に熱狂する男【後編】

バンドとして日本最速で5大ドームツアーを敢行した「King Gnu」、アメリカ、イギリスの大手レーベルと契約し、本格的な世界進出を果たした「MILLENNIUM PARADE」。この2つのバンドとプロジェクトを束ねるのが、音楽家・常田大希だ。ファッションに拡声器、歌詞や楽曲など、三度の飯より常田大希を愛するおかずが彼の魅力や偏愛ぶりを語る。
才能だけじゃない
常田さんはさまざまな楽器を変幻自在に操れることで有名なんです。ピアノやギター、チェロだけでなくベース、ドラム、マリンバ、ティンパニーなど幅広い楽器を演奏できるそうで、しかもただ弾けるだけでなく、輝かしい実績も残されているんです。
ベースに関しては、彼が17歳、高校2年生の時に出場したリットーミュージックが主催する「最強プレイヤーズコンテスト2009」で準グランプリを受賞。驚くべきは、受賞当時の常田さんのベース歴はわずか1年7か月でした。他の受賞者は、皆経歴10年以上の猛者ばかりなのに…。

また18歳、高校3年生の時には、「2010年度 第20回 日本クラシック音楽コンクール チェロ部門 高校の部」で第3位に入賞。チェロは1日10時間以上、猛烈に練習していたそうです。その後、東京藝大に進学と、絵に描いたような輝かしいキャリアを積んでいくのです…。
常田さんが楽器をたくさん弾けることは、もちろん楽曲にも大きな影響を与えているようで、過去のインタビューではこのように語っています。
-自分は楽器自体が得意とするところを把握しているから幅が出せるし、そこが作編曲においても強みなのかなという気がしています- (引用:Taichi Tsuji『Sound&Recordings』2022年7月号 P23)
そんな常田さんに対して、実兄である俊太郎さんはこんなことを言及しています。
-(弟が)好きを貫く集中力には、目を見張るものがあります- (引用:Mako Matsuoka『GINZA』2021年3月号 P51)
常田さんの過去に遡るとこんなに賞を受賞されていたんだとか、猛烈に音楽をやってきたんだということが分かり、「この素晴らしい音楽は、才能だけでなく努力の賜物でもあるのか!」と少しだけ常田さんを理解できたような気がするんです。
こうやって情報の点と点を線に結んで常田さんを少しでも理解しようとする過程が、自分は一番好きなのかもしれません。

彼が影響を受けた数々のアーティスト
常田さんはインタビューで、自身の音楽ルーツや影響を受けたアーティスト達を包み隠さず話してくれるのも魅力です。ただ僕は、そこで情報を得るだけでは終わらせずに、「どんなアーティストがどんな影響を与えたのか?」を、必ずそのアーティストの作品を聴いて、観て考察までするようにしています。そうしないと表面的な理解だけで、常田さんがどんな影響を受けたのかまでは理解が深まらないからです。(もちろん理解までは程遠いですが…)
常田さんの口からよく名前が挙がるアーティスト
■スタンリー・キューブリック(常田さんのアートの礎?)
■川久保玲(ビジネスマインドや姿勢?)
■ジミ・ヘンドリックス(音楽・カルチャーの原体験?)
■ケンドリック・ラマー(現代の憧れ?)
他にもBeatlesやRadiohead、Arctic Monkeys、クリストファー・ノーラン、山本耀司、宮崎駿など世界で活躍してきた錚々たる名前が挙がってきます。語弊がないように伝わってほしいのですが、常田さんはいい意味で影響されやすい人なんだと思っています。その時々で好きなアーティストがいて、そのアーティストに影響されたものをスッと自分の音楽に取り入れて、新しい何かを創作されているイメージです。でもそれは、常田さんのとてつもない才能に加えて、選り好みしないで日々いろんな音楽を聴いたり、カルチャーを取り入れようとしている“柔軟で寛容な姿勢”なんだと僕は思います。
兄、俊太郎さんの発言からも、似たようなことが読み取ることができるかもしれません。
-僕が思う大希の才能をひとつ挙げるとすると、それは編集力だと思います。分野を横断する視野を持ち自分が面白いと思うものを自由自在に繋ぎ合わせていっている- (引用:ITAKO JUNICHIRO『SWITCH』2021年2月号 P43)

最近だと影響されたものを自身の作品に取り入れる、そういう実験的な取り組みは顕著に表れていると思います。King Gnuの「THE GREATEST UNKNOWN」という4枚目のアルバムはエレクトロやHIP HOP的なアプローチで厚みやビート感が強く、バンドサウンド全開な前作のアルバム「CEREMONY」とは一線を画しています。
「どっちが好き?」論争が出てきそうなくらいの振り切り方で、自分の中ではRadioheadの前期(バンドサウンド)と後期(エレクトロ)みたいな衝撃でした。「俺たちはまだこんなこともできるんだぜ」と暗示しているようで、次はどんな作品を生み出してくれるのかワクワクしちゃいます。
常田さんはROCK、HIP HOP、JAZZ、R&Bみたいな音楽のカテゴリーにとどまらず、映画やアニメなどアートという大きなくくりで影響を受けてらっしゃると思うので、常田さんのルーツを探るうえでさまざまなアーティストの作品に出会えるのもまた、楽しみの一つなんです。
ライブでしか聴けない神アレンジ
僕が常田さんに夢中になったきっかけの一つが、ギターのアコースティックアレンジです。初めて観たのがTwitter(現X)に挙がっていた「Diving to you/Srv.vinci」という曲でした。その動画を観る以前、僕はアコースティックアレンジというのが嫌いだったんです。というのは、エレキで弾いている曲をただアコギに持ち替えてコードをなぞる、アルペジオで弾くだけ、みたいなイメージが強くて興ざめすることが多かったからです。
でも常田さんのアレンジは雷が落ちる程の衝撃でした。曲のアレンジはもちろん、音の鳴り、奏法、指板のポジショニングのどれもが美しく、「タダ者じゃない」っていうのはギターを弾いている身からするともう一目瞭然でした。その動画で常田さんが弾いていたアコギがどうしても欲しくて、当時は同じものを血眼になって探しました(笑)。
常田さんの才能を目の当たりにできるのは、間違いなくライブアレンジ。常田さん自身も“音源がスタートでライブで良いものになっていく”とおっしゃるくらい、ライブにかける思いがとても強いんだと思います。ということで、僕が思う“常田大希の魅力を余すことなく感じられるライブの魅力”を勝手に紹介します(笑)。
①音源には収録されていない幻のギターソロが聴ける
King Gnuの楽曲にはギターソロが録音されていないものが、意外と多いんです。それも1曲2曲ではありません! 例えば、「Tokyo Rendez-Vous」、「McDonald Romance」、「NIGHT POOL」、「サマーレインダイバー」、「Prayer X」、「BOY」、「阿修羅」など。King Gnuのライブに行けば、それらの曲のギターソロだって聴ける可能性が高いんです。
しかも「え?ライブで聴かせるためにワザと音源に入れなかったの?(余白を残しているのか?)」って思えるほど、完成されたギターソロの数々。こんなかっこいいギターソロを音源に吹き込まないでライブでしか聴かせないなんて…とんでもない焦らしプレイだと思います(笑)。ギターキッズ達が間違いなく歓喜するであろう名プレイの数々を、“ライブでのみ”拝めることができるんです!
また、音源にギターソロが入っている曲も、ライブ毎でアレンジが全然違うんです。特に激熱なのがKingGnu の「Sorrows」という曲。中でも僕が一番好きなのは2022年の「Live at TOKYO DOME」でのアレンジ。
音源のソロもかなりテクニカルなんですが、ライブでのソロは原型をとどめない程の超絶技巧アレンジなんです。ここまでアレンジできるのは、常田さんのセンスや技術のみならず、自身が作曲した楽曲一つ一つをとても大切にしているからだと僕は思います。聴いたことのない神ギターアレンジに加えて、常田さんの曲への愛情まで見える気がするライブなんて、最高過ぎやしませんか?

②ライブで完成する曲がある
これはどういうことかと申しますと、スマホや車のオーディオで聴くだけだと100%で魅力が伝わらない曲っていうのがあると個人的には思っているんです。いや、というよりライブに行かないと完成した曲が聴けないっていう言い方が正しいかもしれません。それが「Stardom」と「雨燦々」という曲です。(個人の意見です)
この2曲は、ライブ会場でのファンの歓声や合唱が生まれて、そこで初めて最大限の魅力が発揮される曲だと思っています。それこそ冒頭で語った常田さんの“音源がスタートでライブで良いものになっていく”って言葉通りだと思うので、ぜひライブを体感していただきたいと思います。(完成という言葉を僕ごときが使うのは大変おこがましいので、“ライブで最大限に魅力が感じられる曲がある”ということでご理解をいただけますと幸いです)
最近ではライブで流血している常田さんの写真も有名です。血を流しながら全身全霊で音楽を奏でて、ライブに命を懸けている姿はとんでもなくかっこいい。そんな常田さんを見られるかもしれないライブは、さらなる常田大希沼の深みにハマること間違いなしです!
常田脳を理解する
僕が常田さんの情報をSNSで配信している目的は、投稿を始めた頃と今では大きく変わりました。投稿を始めた当時は、“可能な限り正しい情報を共有したい”というのが一番の目的でした。実は常田さんのファッションを紹介するサイトは当時でもいくつかあったのですが、紹介するアイテムが極端に少なかったり、写真は載せているのに「こちらは特定次第掲載します」といった釣りみたいなサイトも多かった。情報に翻弄されるくらいなら、自分で確かな情報を探して提供したいと思い、必死で情報を漁り始めたんです。
正直言うと、フォロワー1万人くらいまでは承認欲求だったり、フォロワー数を気にするエゴみたいなものも少なからずあったと思うんです。でも今はそれが全くなくて、そんなことより“常田さんの為に自分ができることは何か?”を一番に考えるようになりました。
例えば、常田さんが着用しているアディダスのアイテムを特定してすぐに購入できるようにECサイトへのリンクを貼ったり、少し複雑なチケットの応募の仕方を一から説明してみたり、MILLENNIUM PARADEに参加しそうな海外アーティストを簡潔に紹介してみたり…。実際お役に立てているかは分かりませんが、常田さんにとっても常田さんのファンの方にとっても有益な情報を発信することを心掛けています。

以前、広告代理店に勤務していた際に、当時の社長にこんなことを言われたんです。「上司が何を考えているのか?それが分かるとお前が今何をすべきかが見えてくる」と。僕はその言葉をずっと大事にしていて、今では常田さんの頭の中を理解しようとすることで、一歩二歩先にやるべきことが見えてくる気がしていて、これからもそれをずっと続けていくだけだと思っています。
今では常田さんの人気とともに僕のSNSをフォローしてくださる方々が増えてきて、より一層責任感は増していますが、置かれた環境に感謝しながら、「安心、安全、誰も傷つけない」をモットーに情報を配信して、これからも常田さんを応援していきたいです。

本人のプライベートな情報はあえて耳に入れないようにしている。
