エクストリーム週末! 誰も入ったことのない温泉を探して vol.2 〜人知れず山の中で湧き続ける野生の温泉「野湯」が最高すぎる!〜

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会社員の傍ら、週末になると秘湯どころじゃない「未発見の温泉」を求めて道なき山々を探索。なぜそんな活動を続けるのか。快適な旅館の湯船とは180°違う温泉体験を求める”偏愛”趣味の魅力を紹介する。

温泉が湧きやすい場所は「野湯」から学べ! 

前回、まだ人類に見つかっていない温泉を探す活動「前人未到温泉」についてお伝えしたが、正確にはこの活動には大きく分けて2つのパートが存在する。それは文字通り未知の温泉源泉を探す「未到温泉探索」とすでに発見されている野生の温泉に向かう「野湯探訪」だ。

まず大前提をお伝えすると、これまで5年間の「未到温泉探索」活動で人類未発見だと確信できる源泉は未だ見つけることが出来ていない。書籍やネット上にも全く情報のない場所に源泉を見つけたことはあるが、人里からの距離を考えると未発見と言い切れるものではなかったり、温泉として入浴するのはあまりに少なすぎるチョロチョロとした冷たい源泉だった。「未到温泉探索」活動のほとんどで単に泥だらけ汗だくで山の中を歩き回って、手ぶらで家に帰っている。いかに人工衛星サーモ画像を基に探してもそう簡単に未到温泉は見つかるものではない。

活動の中で発見した謎の源泉。しかし入浴できるようなものではなかった。

そこで、この「未到温泉探索」の精度を高める重要な役割を果たすのが「野湯探訪」である。『野湯』とは温泉旅館などに利用されていない温泉源泉を指す。温泉旅館の立派な湯船が「動物園」に当たるとするならば、野湯は「サバンナ」。その名の通り”野生の温泉”である。つまり「前人未到温泉」活動は未発見の野湯を探す活動と言い換えることもできる。そんな野生の温泉なんてものが世の中に一体いくつあるのか、という話だが、実は野湯は日本の山の中には数えきれないほど存在している。そんな野湯を訪れることがなぜ重要なのかというと、山のどんな場所に温泉が湧きやすいのかデータを集めることができるからだ。この経験値なく闇雲に探していては未知の温泉を見つけ出すことは難しい。今回は実際にどんな場所に野湯が湧いていたのか実例を基に紹介したい。

温泉はどんな場所に湧いているのか?

まず、野湯に行く事を便宜上「野湯探訪」と呼んでいるが、各地にある野湯の場所がまとめられているようなことは決してない。そもそも野湯は山奥にあることが多く正確な場所も分からないのだ。なので位置が示された地図をもとにふらりと足を運んでみる、というような気軽なものではなく、GPSを頼りに野湯があるらしいという情報を基に足で探すことになる。「野湯に行く」というのは野湯を探す行為だと理解して欲しい。十分に装備を整えた上で向かってほしい。

①温泉は火山の近くに湧いている

これは当然といえば当然だが、やはり火山が近くにあるエリアには温泉が多く湧いている。火山を近くに持つ那須や別府、草津・万座といった温泉地には多くの源泉がある。これらは人里に近い場所に湧き出ていれば当然、施設に引かれて利用されているが、山奥にある源泉はそのまま放置されている。火山が近くにあって、なおかつ山深いエリア。そういうところに温泉が野湯として残っていることも多いのだ。

今なお噴気をあげ続ける、那須の茶臼岳にある野湯

②温泉は谷間や沢沿いに湧いている

いかに地熱ポテンシャルが高いエリアでも水がないと温泉は湧かない。野湯を巡って学んだのは「温泉を探すなら谷や沢沿いを探せ」ということだ。山の尾根(出っぱっているところ)に温泉が湧いていることはまずない。大半の野湯は谷間や水辺に湧いているのた。この事実は未発見の温泉を探すのに大きな指針となっている。

火山地帯には川が丸ごと温泉という野湯も

海に湧いている野湯では大海原そのものを湯船にして入ることができる

③温泉が湧いている場所には温泉由来の地名が存在している

温泉探しの別のアプローチとして「地名」をもとに探すこともできる。上記の②を踏まえるならば「沢の名前」である。人里にある川だけではなく、山奥の沢にも意外に名前がつけられている。その中には温泉を連想させる名前の沢があることも。たとえば「硫黄沢」「濁沢」など。「湯沢」という温泉が湧いていないとおかしい名前の沢さえ日本各地にある。実際にそんな名前の沢には野湯が湧いていることも多いのだ。そんな沢にはまだ見ぬ源泉があるのかも知れない。

栃木の「湯沢」にはもうもうと湯気が立ち上る熱湯温泉が湧いている

つまり温泉を探すなら火山地帯の谷間や沢。特に温泉由来の名前がついている沢はかなりの確率で温泉が湧いている。未知の温泉を探すという目標を据えたこの「前人未到温泉」活動を始めたころ、そもそも未発見の温泉があるのかどうか分からなかった。あるのかないのか誰かがやってみないと答えを出せないだろう、そういう思いから活動をしていたのだが、今ならはっきり言える。間違いなく人類未発見の温泉は存在する。次回はそう考えるに至ったこれまでの成果と更なる野湯・未到温泉の魅力についてお伝えする。

三浦 靖雄

三浦 靖雄

Miura Yasuo

1985年広島県生まれ。会社員として働く傍ら、休日には「人類未発見の温泉を探し出して、史上一番風呂に入浴」するために各地の山中を探索する。その活動の様子はブログ『前人未到温泉』などで発信を行なっている。