歴代プリキュアを一覧でたどると見えてくる、20年不変の必勝パターン

2004年に「ふたりはプリキュア」が始まってから、プリキュアシリーズはすでに20作品を超えました。毎年春になると主人公も舞台も敵もほぼ総入れ替えになり、前の年のヒロインたちが本編にほとんど姿を見せなくなります。子ども向けアニメとしては珍しいほど思い切った新陳代謝を続けているにもかかわらず、シリーズ自体は同じタイトルのまま20年以上も看板を掲げ続けています。歴代作品を一覧で並べてみると、驚くほど同じ骨格が繰り返されていることにも気づきます。二人一組、対照的な色、そして毎年の総入れ替え。この規則性はどこから来ていて、なぜ20年以上も飽きられずに続いているのか、実際の作品を振り返りながら整理してみます。

毎年キャラも世界観も総入れ替えになるという掟

プリキュアシリーズの最大の特徴は、主人公も敵も舞台設定も、原則として1年ごとにまるごと入れ替わることです。2004年の「ふたりはプリキュア」以降、ほぼ毎年2月に新シリーズへとバトンタッチしており、2026年時点で本編は23作品を数えます。歴代のヒロインが再登場するのは劇場版の「オールスターズ」企画などに限られ、テレビシリーズ本編では基本的に一度きりの主人公です。日本の多くの園や学校が4月に新年度を迎えることを踏まえると、その少し前にあたる2月という切り替えのタイミングも、新しい年少さんに向けて商品ラインを一新するうえで都合の良い時期だったと考えられます。

長寿シリーズであれば主人公を固定し続けるのが自然に思えますが、プリキュアはあえてその逆を行っています。背景にあるのは、主な視聴者である未就学児が毎年入れ替わっていくという単純な事実です。今年の年長さんは来年には小学生になり、変身グッズを卒業していきます。そこで新しい年少さんに向けて毎年まったく新しいキャラクターと玩具ラインを用意し、購買層の入れ替わりに合わせてシリーズごとブランドを一新するという設計になっています。これは、特撮の戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズが長年培ってきた「年度替わりで総入れ替え」という興行モデルを、女児向けアニメの側に持ち込んだ形とも言えます。

唯一の例外が、劇場版の「プリキュアオールスターズ」です。これは2008年、シリーズ5周年を記念した短編作品で初めて実現した、歴代のヒロインたちが世代を超えて共演する企画で、以後もシリーズの節目ごとに繰り返し制作されてきました。20周年にあたる2023年公開の「映画プリキュアオールスターズF」では、歴代のプリキュア全員が集結する展開が5年ぶりに実現しています。ふだんは1年きりで卒業していくはずのヒロインたちが、こうした節目にだけ一堂に会するからこそ、久しぶりの再会に懐かしさを覚える観客も多いようです。

代表的な作品を放送年で並べると、総入れ替えの中でも受け継がれている部分と、時代ごとに更新されてきた部分の両方が見えてきます。

放送年作品名注目ポイント
2004ふたりはプリキュアシリーズ第1作。杖を使わず素手で戦う2人組という原型を確立
2007Yes!プリキュア5キュアドリーム、キュアルージュ、キュアアクア、キュアミント、キュアレモネードの5人体制に拡大
2018HUGっと!プリキュア作中に「キュアアンフィニ」名義の男の子キャラクターがゲスト的に登場
2023ひろがるスカイ!プリキュア20周年記念作品。史上初のレギュラー男子プリキュア「キュアウィング」と、初の新成人プリキュア「キュアバタフライ」が誕生
2024わんだふるぷりきゅあ!関連玩具の年間売上が78億円に到達(前年度は64億円)
2025キミとアイドルプリキュア♪第1四半期だけで25億円を売り上げ、歴代シリーズの同時期実績を上回るペース
2026名探偵プリキュア!現在放送中の最新作

二人一組、対照的な色が生み出す対比の物語装置

初代「ふたりはプリキュア」は、その名の通り2人の主人公から始まりました。おっとりした優等生と、活発でぶっきらぼうな女の子という、性格も色も対照的な2人がコンビを組む構成です。この「ふたり」という設定には、刑事ドラマのバディもの、いわゆる相棒の関係性が下敷きになっていたことが、後年のインタビューで明かされています。物語上どうしても必要という人数ではなく、あえて主要人物を2人に絞ることで、対照的な2人の絆と成長そのものを軸に据えるという狙いがあったようです。

その後シリーズは3人、4人、5人と人数を増やしていきますが、ピンクを基調にした主人公と、異なる色を持つ仲間という組み合わせの骨格は一貫して受け継がれています。2007年の「Yes!プリキュア5」では、ピンクのキュアドリームを中心に、赤のキュアルージュ、水色のキュアアクア、緑のキュアミント、黄色のキュアレモネードという5色編成にまで拡張されました。人数が増えても、バディものの発想そのものが消えたわけではなく、その都度メインとなる2人の関係性が物語の軸に据えられる作品も少なくありません。

色の割り当てには一定の役割分担があるとされ、知的で冷静なキャラクターには青系、活発でスポーティなキャラクターには黄系、ミステリアスな立ち位置のキャラクターには紫系が選ばれる傾向があると指摘されています。金沢大学リポジトリに収録された研究では、髪の色というノンバーバルな情報とキャラクターの性格特徴の関連性が検証されており、色そのものが視聴者に対して性格を伝える記号として機能していることが示されています。初代の主人公の一人「キュアブラック」は名前の通り黒がテーマカラーですが、分類上はピンクグループの主人公役として扱われることが多く、色名と役割が必ずしも一対一で対応しているわけではない点も興味深いところです。

こうした配色のルールがあることで、初めて見るシリーズでも、変身後の色を見ただけで大まかな役どころを予測できてしまうという副次的な効果も生まれています。毎年キャラクターの名前も設定もリセットされるにもかかわらず、色という視覚情報だけは20年分の蓄積が視聴者側の読み取り方として残り続けているとも言えます。

女の子だって暴れたいという発想の転換

プリキュアが企画された当時、女児向けアニメの主流は魔法の杖やステッキを使い、遠くから魔法を放つタイプの魔法少女ものでした。初代プロデューサーの鷲尾天氏は、当時のインタビューで「女の子だって暴れたい」という発想から企画を立てたと語っています。プリキュアの主人公たちは杖を持たず、自分の拳と脚で敵と戦うという、それまでの女児アニメにはあまりなかった身体性を打ち出しました。

一方で、鷲尾氏は現場に細かいルールも課していたことを明かしています。「女の子の顔やお腹を直接攻撃してはいけない、必ずガードさせる」「食べ物を粗末に扱ってはいけない」といった具体的な取り決めです。逆に言えば、こうした最低限のルールさえ守れば、それ以外の部分では従来の女児アニメの常識にとらわれなくてよいという方針だったとされています。この保守と挑戦のバランスが、結果として他にはない作品性を生み出したと振り返られています。

もともと鷲尾氏自身は、女の子が何を好むのかを詳しく知っていたわけではなかったといいます。それでも自分の幼少期を振り返ると、近所の女の子たちと特に性別を意識せずに遊んでいた記憶があり、就学前の子どもにはそれほど大きな性差はないのではないかと考えたことが、自分の好きなものを女児向け企画にそのまま持ち込むという発想につながったと語られています。杖を持たず素手で戦うという設定も、そうした個人的な原体験の延長線上から生まれたものだったようです。

20年かけて更新されてきたプリキュアの資格

「女の子が主人公」という前提そのものも、実は20年の間に少しずつ更新されてきました。2018年の「HUGっと!プリキュア」には「キュアアンフィニ」という名義で男の子のキャラクターがゲスト的に登場し、2023年の20周年記念作品「ひろがるスカイ!プリキュア」では、12歳の男の子がレギュラーの「キュアウィング」に変身する展開が初めて実現しています。同作ではさらに、新成人の女性が変身する「キュアバタフライ」も登場し、プリキュアになれる年齢の幅も広がりました。

鷲尾氏はこうした変化について、企画発表の段階から男性キャラクターの登場を明言していたこともあり、「特別なことではない」という趣旨のコメントを寄せています。毎年総入れ替えという仕組みがあるからこそ、性別や年齢に関する前提を少しずつ見直しながら、それでもシリーズ全体の骨格は保つという柔軟な運用が可能になっているとも言えそうです。仮に固定の主人公が20年間ずっと同じ番組を背負っていたら、こうした前提の見直しはもっと難しかったはずです。1年ごとにキャストごと入れ替わる構造そのものが、次の年に新しい挑戦を持ち込むための余白として機能してきた面もあります。

名乗りという儀式が生む、世代を超えた既視感

歴代プリキュアを一覧でたどると見えてくる、20年不変の必勝パターン

キャラクターも設定も毎年一新される一方で、20年以上どの作品にも欠かさず存在する演出があります。変身を終えた主人公たちが、決まったポーズとともに自分の名前を高らかに名乗るという、いわゆる名乗り口上です。ねとらぼのコラムでも触れられているように、この名乗りのセリフは各シリーズで様子が異なり、メンバーが増えるとその分だけ台詞も長くなっていきますが、変身直後に必ず名乗りを上げるという型そのものは初代から最新作まで一度も途切れていません。

毎回同じ長さの尺を使って、ほぼ同じ構成の音楽と光の演出のなかで名乗りが挿入されるため、内容そのものは知らない最新作を初めて見たときでも、どこか懐かしい既視感を覚える視聴者は多いはずです。かつて自分が観ていたシリーズの変身シーンの記憶が、色や台詞は違ってもリズムとして体に残っていて、それが新しい作品を見たときの「知っている感じ」につながっています。総入れ替えという建前の裏で、体感としての連続性がこっそり保たれている仕組みとも言えます。

気づけば子どもより大人の方が見ているというねじれ

歴代プリキュアを一覧でたどると見えてくる、20年不変の必勝パターン

もともと未就学児向けに設計された番組であるにもかかわらず、プリキュアは近年、大人の視聴者の存在感が際立つ作品になっています。講談社の現代ビジネスに掲載された分析記事では、ビデオリサーチの個人視聴率データをもとに、2018年放送の「HUGっと!プリキュア」における年代別の視聴率が示されています。子ども(4〜12歳)の個人視聴率が約8%だったのに対し、20歳以上の男女それぞれの視聴率を合計するとそれを上回る水準になっており、年齢層別の人口規模まで加味すると、実際に見ている人数では大人が子どもの2倍以上に達するという試算も紹介されています。

この傾向を後押ししているのが、いわゆる推し活文化です。ねとらぼの取材記事によれば、近年のプリキュアシリーズはアクリルスタンドやコレクション性の高いフィギュアなど、大人のファンが集めたくなるグッズ展開を強化しており、子ども向けと大人向けの両輪でシリーズを成長させる戦略が明確に打ち出されています。コラボカフェや展覧会といったイベント事業も並行して展開されており、休日に売り場や会場に足を運んでグッズを手に取るという、子ども時代には縁のなかった大人ならではの楽しみ方も広がっています。2004年の放送開始時に幼児だった世代がすでに成人し、当時の記憶を懐かしみながら新作を追いかけているという側面もあり、シリーズの視聴年齢層はデビュー当初よりも確実に幅広くなっています。

推し活時代に売上を更新し続ける商業的な理由

こうした多世代戦略は、実際の数字にも表れています。ねとらぼの報道によると、2024年度に放送された「わんだふるぷりきゅあ!」の関連玩具売上は78億円に達し、前年度の64億円から大きく伸びました。さらに2025年度の「キミとアイドルプリキュア♪」は、第1四半期の時点で25億円を売り上げ、過去のシリーズの同時期実績を上回るペースを記録しています。

少子化によって本来の主要顧客である未就学児の人口そのものが減少し続けている中で、玩具売上が過去5年から10年で最高水準を更新しているという事実は、子ども向け玩具というプリキュアの本来の枠組みだけでは説明がつきません。ねとらぼの分析記事では、好調の要因として、缶バッジやアクリルスタンドを中心にしたショップ事業の拡大、コラボカフェなど大人を意識した施策の充実、そしてアニメ本編そのものやイベント事業の強さという3点が挙げられています。子どもに向けた設計思想を保ちながら、大人のファンを取りこぼさない商品展開を並行させたことが、シリーズ全体の商業的な体力を底上げしていると見られています。

来年はどんな二人が生まれるのか、が待たれ続ける理由

主人公も舞台も毎年総入れ替えになるという、本来なら愛着が続きにくいはずの構造を持ちながら、プリキュアは20年以上にわたって視聴者を引きつけ続けています。その理由は、表面的な設定や、性別・年齢といった前提条件がどれだけ更新されても、二人一組で対照的な色を持つ主人公たちが、杖に頼らず自分の力で困難に立ち向かうという骨格そのものは変わらないという安心感にあるようです。

見た目も世界観も毎年新しくなるからこそ新鮮でいられて、根っこの構造が変わらないからこそ長年のファンも離れない。2026年放送の「名探偵プリキュア!」もまた、この二重構造の上に成り立つ最新の一枚だと考えると、来年の春にどんな二人が登場するのかを気にしてしまうのも、自然なことなのかもしれません。

かつてブラウン管の前で変身シーンに見入っていた子どもたちが、今は自分の子どもと並んで新シリーズを見ている光景も、この骨格が世代を超えて機能し続けている証拠のひとつと言えそうです。毎年主役が代わるという点だけを見れば入れ替わりの激しいシリーズですが、二人一組で立ち向かうという原型と、変身直後に名乗りを上げるという儀式だけは、次に誰が主人公になっても変わらず引き継がれていくはずです。

PinTo Times ニュースレター登録

参考

PinTo Times

  • x

-偏愛が気づかせる、私たちの見えていなかった世界-

なぜだか目が離せない。
偏った愛とその持ち主は、不思議な引力を持つものです。
“偏”に対して真っ直ぐに、“愛”を注ぐからこそ持ち得た独自の眼差し。
そんな偏愛者の主観に満ちたピントから覗かれる世界には、
ウィットに富んだ思いがけない驚きが広がります。
なんだかわからず面白い。「そういうことか」とピンとくる。

偏愛のミカタ PinTo Times