かまぼこの色は昔どうやってつけた?紅白の由来と天然着色料の歴史

お正月のおせち料理やお弁当の定番「紅白かまぼこ」。あの鮮やかな赤と純白のコントラストは、見るだけでパッと華やかな気持ちになりますよね。

でも、今みたいに便利な着色料がなかった昔は、あの鮮やかな赤い色を一体どうやって出していたのでしょうか?今回は、かまぼこをはじめとする食品の「色」に隠された昔の人の知恵や、紅白カラーに込められた縁起の良い意味をひも解いていきます。

かまぼこの色は昔、どうやってつけていた?

食紅がスーパーで簡単に買えなかった時代、食品に鮮やかな色をつけるのは並大抵の作業ではありませんでした。草花や鉱物、木灰など、身近な自然の力をフル活用していた先人たちの驚きの技術をご紹介します。

古くは「紅花(べにばな)」などの植物から

昔のかまぼこなど、お祝い事の食事には、着物や口紅の染料としても珍重されていた「紅花」などの植物が使われていました。

キク科である紅花の花びらには水に溶けにくい赤色素が含まれており、これを取り出すのがまた一苦労。江戸時代には、紅花を発酵・乾燥させた「紅餅」を作り、それをアルカリ性の木灰の汁で溶かし出し、さらに梅の果肉を燻した「烏梅(うばい)」という強い酸性の液体を加えて中和させることで、ようやくあの鮮やかな紅赤色を生み出していました。

こうして手間暇かけて作られた紅色は、一時期は身分の高い貴族しか身につけられなかったほどの超高級品です。ひな祭りの菱餅や紅白かまぼこなど、特別な「ハレの日」にだけ許された貴重な自然の恵みだったんですね。

その他の自然素材(木灰や赤土など)

花びら以外にも、地域によっては独自の自然素材が活躍していました。

たとえば沖縄の伝統的なかまぼこ作りでは、ガジュマルなどを燃やした強いアルカリ性の木灰の汁を加えます。こうすることですり身がまとまりやすくなり、日持ちや独特の弾力もアップする工夫がされてきました。

また、ちょっと変わったところでは愛知県名古屋市周辺の「朱色かまぼこ」。これは熱田神宮の朱塗りの社殿にあやかったとも、派手好きだった織田信長の好みが反映されたとも言われています。さらに滋賀県近江八幡の「赤こんにゃく」も、昔は地元の「赤土」の鉄分を使って色付けされていたという伝承が。権威や信仰のシンボルである「赤」を、身近な土や鉱物から取り入れていたなんて面白いですよね。

なぜ、かまぼこには「赤と白」の色がついているの?

そもそも、なぜかまぼこは「赤と白」の組み合わせなのでしょうか?ただ見栄えが良いからではなく、そこには日本人が昔から大切にしてきた祈りが込められています。

縁起の良い「紅白」と「初日の出」

お正月のおせちに欠かせない一番の理由は、ズバリ最高に縁起が良い「紅白」カラーだから。さらに、板かまぼこを切った時の「半円形」が、元旦の地平線から昇る「初日の出」の形に似ているからなんです。

新しい年の始まりに、希望や運気アップの願いを込めて日の出そっくりのかまぼこを重箱に詰める。冷蔵庫がなくて生の魚が保存できなかった時代、日持ちのする練り物は、おせちを華やかに彩るのにぴったりの存在でした。

魔除けの「赤」と清浄の「白」

紅白それぞれの色にも、独立した深い意味があります。

  • 紅(赤・ピンク):「めでたさ」だけでなく、邪気を払う「魔除け」の力があると信じられてきました。神社の鳥居が赤いのと同じように、赤い食べ物を食べることで家族の無病息災を祈ったわけです。
  • 白:「神聖さ」や「清らかな心」を表します。前の年の汚れを落として、真っさらな気持ちで新年を迎えたいという思いが込められています。

ちなみに、中国の陰陽説からきた「右紅左白」という考え方にならい、お皿や重箱に盛り付ける時は向かって右に紅、左に白の順に並べると、より縁起が良いとされていますよ。

昔と違う?現代のかまぼこはどうやって色をつけている?

時代は変わり、現代では紅花のように時間もコストもかかる抽出方法はあまり使われなくなりました。では、今私たちがスーパーで買っている現代のかまぼこはどうやって色付けされているのでしょうか。

トマトやパプリカなど「野菜由来」の天然着色料

健康志向が高まる今、無添加や天然着色をアピールするかまぼこには「野菜由来」の色素がよく使われています。

たとえば、富山県名物の「赤巻かまぼこ」の赤い皮の部分には、パプリカ色素やトマト色素が活躍しています。パプリカ色素などは合成着色料を使わずに自然な明るい色が出せて、「何から作られた色か」が消費者にも分かりやすいのが嬉しいポイントです。

他にも、お米に紅麹菌を繁殖させた「ベニコウジ色素(モナスカス色素)」も、深い赤色が出せる天然色素としてカニカマなどで長年利用されています。

コチニール色素(カルミン酸)について

かまぼこや魚肉ソーセージ、さらには口紅の鮮やかなピンク・赤色を出すためによく使われてきたのが「コチニール色素」です。これは中南米にいる「コチニールカイガラムシ」という虫から抽出された天然由来の色素です。

魚のタンパク質にしっかり染まって色がにじみにくく、光や熱にも強いので、食品加工にはとても便利。ただ、「虫由来」という点に抵抗を感じる人がいたり、製造過程でごくわずかに残るタンパク質が原因でアレルギーを起こす可能性が指摘されたこともありました。

そのため最近では、アレルギーの原因を取り除いた「低アレルゲンコチニール色素」が開発されるなど、より安全性を高める工夫が絶えず進められています。

合成着色料との違い

天然着色料と対極にあるのが、石油などを原料に化学的に作られた「合成着色料」です。「赤色106号」や「赤色3号」などがこれにあたります。安くて着色力が強く、長期間お店に並べても色あせないのが大きなメリットです。

ただ、安全性については世界的に厳しい目が向けられています。たとえば「赤色106号」は健康へのリスクが捨てきれないとして海外の多くの国で使用が禁止されており、食品への使用を認めているのは実質的に日本くらいです。「赤色3号」もアメリカやドイツなどで制限・禁止されています。

最近では消費者の声を受け、長年合成着色料を使っていた老舗メーカーでも、天然着色料(コチニールやとうがらし色素など)へ切り替える動きが加速しています。

時代主な着色方法・原料特徴・背景
昔(江戸時代〜)紅花などの植物・木灰・赤土自然の草花から抽出。途方もない手間がかかり非常に貴重だった。
現代(天然色素)トマト、パプリカ、コチニール、紅麹など安全性が高く、自然な色合い。現代の主流になりつつある。
現代(合成色素)赤色3号、赤色106号など非常に鮮やかで退色しにくい。安価だが、安全性から見直す動きも。
【比較表】昔と今の「かまぼこの着色料」まとめ

昔の人も自然の恵みでかまぼこを彩っていた!

いつの時代も、かまぼこの赤い色は単なる飾りではなく、人々の「お祝いの気持ち」や「魔除けの願い」が込められた大切なシンボルでした。便利な着色料がなかった昔の人は、花や木、土といった自然の恵みを使って、現代人には想像もつかないような手間暇をかけてあの紅白を生み出していたんですね。

今は技術が進歩して、手軽できれいなかまぼこを楽しめるようになりました。さらに最近では、野菜などの天然由来の色素に再び戻ろうとする流れも起きています。

次にお正月のおせちやお弁当で赤いかまぼこを食べるときは、ぜひパッケージ裏の「着色料」の欄をちょっと覗いてみてください。色付けに込められた昔の人の工夫や願いを知ると、いつものかまぼこがさらに味わい深く感じられるはずです!

参考

PinTo Times

  • x

-偏愛が気づかせる、私たちの見えていなかった世界-

なぜだか目が離せない。
偏った愛とその持ち主は、不思議な引力を持つものです。
“偏”に対して真っ直ぐに、“愛”を注ぐからこそ持ち得た独自の眼差し。
そんな偏愛者の主観に満ちたピントから覗かれる世界には、
ウィットに富んだ思いがけない驚きが広がります。
なんだかわからず面白い。「そういうことか」とピンとくる。

偏愛のミカタ PinTo Times