【五十音順】万葉仮名の一覧表!自分の名前の書き方や成り立ちも解説
- 1. 万葉仮名(まんようがな)とは?
- 2. 万葉仮名が生まれた歴史と背景
- 3. ひらがな・カタカナのルーツとしての万葉仮名
- 3.1. ひらがな(平仮名)の誕生
- 3.2. カタカナ(片仮名)の誕生
- 4. 【五十音順】万葉仮名の一覧表
- 4.1. 「あ行」の万葉仮名
- 4.2. 「か行」の万葉仮名
- 4.3. 「さ行」の万葉仮名
- 4.4. 「た行」の万葉仮名
- 4.5. 「な行」の万葉仮名
- 4.6. 「は行」の万葉仮名
- 4.7. 「ま行」の万葉仮名
- 4.8. 「や行・ら行・わ行」の万葉仮名
- 5. 万葉仮名の2つの種類「音仮名」と「訓仮名」
- 5.1. 漢字の音を借りた「音仮名(おんがな)」
- 5.2. 漢字の意味を借りた「訓仮名(くんがな)」
- 6. 実践!万葉仮名で自分の名前を書いてみよう
- 6.1. 名前を万葉仮名に変換するコツ
- 6.2. よく使われる万葉仮名の当て字例
- 7. 万葉仮名一覧を活用して古代の言葉に触れよう
- 8. 参考
万葉仮名(まんようがな)とは?

私たちが普段使っている「ひらがな」や「カタカナ」。これらが生まれるよりずっと前、古代の日本人が日本語を書き記すために生み出したのが「万葉仮名(まんようがな)」です。
万葉仮名とは、一言で表すと「日本語の発音を、漢字の音(おん)や訓(くん)を借りて表した文字」のことです。中国から伝わった漢字は、もともと「山(やま)」「川(かわ)」のように、その文字自体が意味を持っている「表意文字」です。しかし、古代の日本人は、漢字の持つ「意味」を一旦横に置き、発音の「響き」だけをパズルのように組み合わせて、日本独自の言葉や和歌のリズムを表現しました。
日本最古の和歌集『万葉集』がこの文字体系で書かれていることから、「万葉仮名」という名前が付けられました。一見すると中国語の文章(漢文)のように見えますが、声に出して読んでみると、大和言葉(やまとことば)が浮かび上がってくるという、ユニークで奥深い文字体系です。
万葉仮名が生まれた歴史と背景

日本にはもともと独自の文字が存在しなかったと考えられています。大陸から漢字が伝来した当初、人々は中国語の文法そのまま(漢文)で文章を読み書きしていました。しかし、それでは日本特有の地名や人名、日本人の感情を詠んだ和歌を正確に書き残すことができません。そこで、5世紀から6世紀にかけて、漢字の「音」だけを借りて日本語の話し言葉をそのまま表記する工夫が始まりました。
これが万葉仮名の誕生です。『古事記』や『日本書紀』といった歴史書、そして『万葉集』において、この表記法は洗練されていきました。
興味深いのは、万葉仮名が一部の貴族や知識人だけの特別なものではなかったという点です。近年、奈良市内の長屋王邸跡などから、約3万5千点もの「木簡(もっかん)」と呼ばれる木の札が発掘されました。
この木簡には、役人の勤務評定や日常のやり取りなどが万葉仮名交じりで記されており、古代社会の実務や日常生活において、万葉仮名が広く使われていたことがわかっています。文字を持たなかった人々が、外国の文字システムを自分たちの言葉に適合させたのです。
ひらがな・カタカナのルーツとしての万葉仮名
私たちが現在使っている「ひらがな」と「カタカナ」は、どちらもこの万葉仮名から派生して生まれました。画数が多く書くのに手間がかかる万葉仮名を、より速く効率的に書くための工夫が、日本独自の文字を生み出す原動力となりました。
ひらがな(平仮名)の誕生
ひらがなは、万葉仮名(漢字)を筆で崩して書いた「草書体(そうしょたい)」から「草仮名(そうがな)」を経由し、さらに簡略化されて生まれました。平安時代に入ると、この流れるような文字は「女手(おんなで)」と呼ばれ、主に女性たちの間で和歌や手紙、物語を書くために好んで使われるようになります。清少納言の『枕草子』や紫式部の『源氏物語』といった平安文学が開花したのは、自分の感情をスムーズに書き表せる「ひらがな」が誕生した影響が大きいと言えます。
カタカナ(片仮名)の誕生
一方カタカナは、万葉仮名(漢字)の「一部(片・かた)」を省略して取り出すというアプローチで生まれました。例えば、「阿」の左側(こざとへん)を取って「ア」、「伊」の左側(にんべん)を取って「イ」としました。カタカナは平安時代初期、主に僧侶たちが難しい仏典を読む際に、行間の狭いスペースに「読み方」をメモ(訓点)するための記号として発達しました。こちらは公文書や学問の場で使われることが多く、直線的で実用的なデザインから「男手(おとこで)」と呼ばれました。
このように、万葉仮名は現代の日本の文字文化の「親」であり、その変遷をたどることは、日本語の成り立ちを知ることにつながります。
【五十音順】万葉仮名の一覧表

それでは、実際にどのような漢字が万葉仮名として使われていたのか、五十音順に見ていきましょう。
実は古代の日本語には、現代のようなアイウエオの5つの母音だけでなく、「甲類」「乙類」と呼ばれる微妙な発音の違いがあり、8つもの母音が存在していました。古代の人々は、この発音の違いを表現するために、使う漢字を明確に使い分けていたのです。
ここでは現代の五十音に整理し、代表的な万葉仮名と、ひらがな・カタカナのルーツとなった漢字をまとめました。
「あ行」の万葉仮名
あ行は、比較的シンプルで馴染みのある漢字が多く使われています。「安」からひらがなの「あ」、「阿」からカタカナの「ア」が作られた経緯がわかります。
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| あ・ア | 安 | 阿 | 阿、安、足、余、吾、網、嗚呼 |
| い・イ | 以 | 伊 | 伊、夷、以、異、移、射、五、馬声 |
| う・ウ | 宇 | 宇 | 宇、羽、有、卯、得、兎、菟 |
| え・エ | 衣 | 江 | 衣、依、愛、榎、荏、得、兄、江、枝 |
| お・オ | 於 | 於 | 意、憶、於、応、飫、億、隠 |
特に「い」の音に「馬声」という字が当てられている点は興味深いです。これは馬の鳴き声(いななき)から連想して音を当てたもので、古代人の言葉遊び(戯書・ぎしょ)のセンスが光っています。
「か行」の万葉仮名
か行は、日常的に目にする漢字から少し複雑な漢字までバリエーションが増えます。「か」に対して「蚊」や「鹿」といった動物の漢字が使われているのも特徴です。
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| か・カ | 加 | 加 | 可、何、加、架、香、蚊、鹿、日 |
| き・キ | 幾 | 幾 | 支、伎、岐、企、棄、寸、来、杵、貴、紀、記、奇、寄、忌、幾、木、樹、城 |
| く・ク | 久 | 久 | 久、九、口、丘、苦、鳩、来、具、倶、供、求、救、孔、玖 |
| け・ケ | 計 | 介 | 祁、家、計、係、価、結、鶏、気、既、毛、飼、食、消、介、木 |
| こ・コ | 己 | 己 | 古、姑、枯、故、侯、孤、児、粉、籠、子、小、己、巨、去、居、忌、許、虚 |
「さ行」の万葉仮名
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| さ・サ | 左 | 散 | 左、佐、沙、作、者、柴、紗、草、散、狭、猿、羅 |
| し・シ | 之 | 之 | 子、之、芝、水、四、司、詞、斯、志、思、信、寺、侍、時、歌、詩、師、紫、新、旨、指、二二 |
| す・ス | 寸 | 須 | 寸、須、周、酒、州、珠、数、酢、栖、渚、巣、為、簀 |
| せ・セ | 世 | 世 | 世、西、斉、勢、施、背、脊、迫、瀬、栖、剤、細、是、制 |
| そ・ソ | 曽 | 曽 | 宗、祖、素、蘇、十、麻、礒、追馬、所、則、曾、僧、増、憎、衣、背、苑、其、彼 |
「し」の万葉仮名に「二二」が含まれていますが、これは「に・に・が・し(2×2=4)」という掛け算を用いたなぞなぞです。
「た行」の万葉仮名
「天」を崩して「て・テ」が生まれた流れがよくわかります。
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| た・タ | 太 | 多 | 太、多、他、丹、駄、田、手、立 |
| ち・チ | 知 | 千 | 知、智、陳、千、乳、血、茅、市、道 |
| つ・ツ | 川 | 州 | 都、豆、通、追、川、津、管 |
| て・テ | 天 | 天 | 堤、天、帝、底、手、代、直、而、価 |
| と・ト | 止 | 止 | 刀、土、斗、度、戸、利、速、砺、砥、外、門、聡、止、等、登、澄、得、騰、十、鳥、常、跡 |
「な行」の万葉仮名
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| な・ナ | 奈 | 奈 | 那、男、奈、南、寧、難、七、名、魚、菜、嘗、无、勿、莫、無、半 |
| に・ニ | 仁 | 仁 | 二、人、日、仁、爾、迩、尼、耳、柔、丹、荷、似、煮、煎、土、何 |
| ぬ・ヌ | 奴 | 奴 | 奴、努、怒、農、濃、沼、宿、寐 |
| ね・ネ | 祢 | 祢 | 禰、尼、泥、年、根、宿、嶺 |
| の・ノ | 乃 | 乃 | 努、怒、野、乃、能、笑、荷、箆 |
「は行」の万葉仮名
「波」や「帆」「羽」など、情景を想起させる漢字が多く見られます。ひらがな・カタカナの「へ・ヘ」は、どちらも「部」という漢字の右側(おおざと)が省略されて生まれました。
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| は・ハ | 波 | 八 | 八、方、芳、房、半、伴、倍、泊、波、婆、破、薄、播、幡、羽、早、者、速、葉、歯 |
| ひ・ヒ | 比 | 比 | 比、必、卑、賓、日、氷、負、飯、檜、火、樋、干、乾 |
| ふ・フ | 不 | 不 | 不、否、布、負、部、敷、経、歴、生 |
| へ・ヘ | 部 | 部 | 平、反、返、弁、弊、陛、遍、覇、部、辺、重、隔、方、家、閉、倍、陪、拝、戸、経、瓦缶 |
| ほ・ホ | 保 | 保 | 百、穂、帆、太 |
「ま行」の万葉仮名
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| ま・マ | 末 | 末 | 万、末、馬、麻、摩、磨、満、前、真、間、鬼、喚犬 |
| み・ミ | 美 | 三 | 民、彌、美、三、水、見、視、御、参、看、監、未、味、尾、微、身、実、箕 |
| む・ム | 武 | 牟 | 牟、武、無、模、務、謀、六、牛鳴 |
| め・メ | 女 | 女 | 売、馬、面、女、婦、梅、米、迷、昧、目、眼、海藻 |
| も・モ | 毛 | 毛 | 毛、木、問、聞、藻、哭、方、面、裙、喪、裳 |
ここでも「ま」に「喚犬(犬を呼ぶ声)」、「む」に「牛鳴(牛の鳴き声)」といった遊び文字が確認できます。
「や行・ら行・わ行」の万葉仮名
現代では使われなくなった「ゐ(ウィ)」や「ゑ(ウェ)」に対応する漢字も存在します。
| 現代の音 | ひらがなの由来 | カタカナの由来 | 代表的な万葉仮名(『万葉集』など) |
| や・ヤ | 也 | 也 | 也、移、夜、楊、耶、野、八、矢、屋 |
| ゆ・ユ | 由 | 由 | 由、喩、遊、湯、弓 |
| よ・ヨ | 与 | 与 | 用、容、欲、夜、与、余、四、世、代、吉、呼 |
| ら・ラ | 良 | 良 | 良、浪、郎、楽、羅、等 |
| り・リ | 利 | 利 | 里、理、利、梨、隣、入、煎 |
| る・ル | 留 | 留 | 留、流、類 |
| れ・レ | 礼 | 礼 | 礼、列、例、烈、連、村 |
| ろ・ロ | 呂 | 呂 | 路、漏、呂、侶、里 |
| わ・ワ | 和 | 和 | 和、丸、輪 |
| を・ヲ | 遠 | 乎 | 乎、呼、遠、鳥、怨、越、少、小、尾、麻、男、緒、雄 |
※「ん・ン」については、後代に「无」や「尓」の草書体から変化して定着したとされています。
万葉仮名の2つの種類「音仮名」と「訓仮名」

これまで見てきたように、万葉仮名には同じ音を表現するためにも多くの漢字が存在します。これらの漢字の当てはめ方には、大きく分けて「音仮名(おんがな)」と「訓仮名(くんがな)」の2つのルールがありました。
漢字の音を借りた「音仮名(おんがな)」
「音仮名」または「借音(しゃくおん)」とは、中国から伝わった漢字の「音読み」を利用して、日本語の音を書き写す方法です。
文字通り発音の響きだけを借りているため、漢字が本来持っている「意味」は関係ありません。外国語の地名を「亜米利加(アメリカ)」と当て字で書くのと同じ感覚です。
- 「ア」の音: 音読みが「ア」である「阿」や「安」を使う。
- 「カ」の音: 音読みが「カ」である「加」や「可」を使う。
- 「ス」の音: 音読みが「ス」である「須」や「州」を使う。
漢字の意味を借りた「訓仮名(くんがな)」
一方、「訓仮名」または「借訓(しゃっくん)」とは、漢字が持つ「意味」から発生した日本語独自の「訓読み」を利用して書き写す方法です。
こちらも、文章全体におけるその漢字の意味は無視して、純粋に「読みの響き」だけを借ります。
- 「カ」の音: 訓読みで「か」と読む「蚊」や「香」を、虫や匂いとは無関係に使う。
- 「キ」の音: 訓読みで「き」と読む「木」や「城」を使う。
- 「マ」の音: 訓読みで「ま」と読む「真」や「間」を使う。
実際の『万葉集』の和歌では、この「音仮名」と「訓仮名」が混ざり合って使われています。
例えば、「二上山母(ふたがみやまも)」において、「二上山(ふたがみやま)」の部分は意味をそのまま表す訓読ですが、最後の「母(も)」は「お母さん」という意味ではなく、「〜も」という助詞の音を表すための音仮名です。
当時の人々は、ただ音を当てるだけでなく、視覚的な字面の美しさなども考慮して文字表現を楽しんでいたと考えられます。
実践!万葉仮名で自分の名前を書いてみよう

ここからは実践編として、万葉仮名一覧表を活用して、自分や家族の名前を古代風の当て字で書いてみる方法をご紹介します。SNSのプロフィール名やサインなどで使ってみると、趣のある印象になります。
名前を万葉仮名に変換するコツ
自分の名前を万葉仮名にする際は、いくつかのポイントを意識すると、現代の生活でも違和感なく馴染む当て字を作ることができます。
- 視覚的な軽さ:万葉仮名は画数が多い漢字が多いため、長すぎる名前をすべて複雑な漢字に変換すると、少し重たい印象になってしまいます。名字との画数のバランスを考慮し、短めで母音がはっきりする音を選ぶのがおすすめです。
- 漢字の意味と「季節感」のバランス:本来「意味を無視して音を借りる」ものですが、自分の名前に使う場合は、やはりポジティブな意味やイメージを活かしたいものです。「海」「陽」「風」といった季節感や情景を表す漢字を取り入れたり、「美」「理」「和」といった汎用性のある漢字と組み合わせたりするとバランスが良くなります。
よく使われる万葉仮名の当て字例
現代の名前に使いやすく、意味合いが良いとされる漢字をいくつかピックアップしました。これらをパズルのように組み合わせてみましょう。
- あ行: 愛(あ)、安(あ)、依(い)、宇(う)、絵(え)
- か行: 佳(か)、香(か)、幾(き)、紀(き)、久(く)
- さ行: 沙(さ)、紗(さ)、志(し)、須(す)、世(せ)
- ま行: 真(ま)、万(ま)、美(み)、実(み)、舞(ま)
【名前の変換例】
- はるか(Haruka) → 波留香(は・る・か)海の穏やかな「波」が「留」まり、良い「香」りが漂うようなイメージ。
- ゆい(Yui) → 由依(ゆ・い)自由でしなやかな響きがあり、現代でもそのまま通用する美しい当て字。
- あきら(Akira) → 安紀良(あ・き・ら)「安」心して時「紀」を「良」く生きるという、堅実な印象。
一覧表から自分の名前を構成する音を探し、「この漢字の見た目が好き」と試行錯誤しながら組み立ててみてください。自分だけの特別なサインが完成するはずです。
万葉仮名一覧を活用して古代の言葉に触れよう

この記事では、ひらがなやカタカナのルーツである「万葉仮名」について、歴史的な成り立ちから一覧表、名前の書き方まで解説しました。
万葉仮名は、日本独自の文字を持たなかった古代の人々が、「漢字」というツールを柔軟に受け入れ、自分たちの言葉の「音」に適合させた創造力の結晶です。私たちが書いている「あ」という曲線の裏には「安」という漢字があり、「イ」という直線の裏には「伊」という歴史が隠されています。
今後、古文を読んだり石碑を眺めたりする機会があれば、そこに刻まれた文字にぜひ注目してみてください。万葉仮名の仕組みを知ることで、古代の人々が紡ぎ出した言葉がより身近に感じられるはずです。





