SCP財団とは?元ネタや最強・怖いオブジェクトのランキング、アニヲタWikiより詳しい完全入門ガイド

最近、YouTubeやTikTokで「SCP」という言葉をよく見かけませんか?

無機質なコンクリートの部屋、オレンジ色のつなぎを着た人々、そして理不尽な死をもたらす異形の怪物たち。ゲーム実況や考察動画、あるいはショート動画で流れてくる「まばたきをしてはいけない彫刻」や「絶対に死なないトカゲ」の姿に、恐怖と同時に奇妙な好奇心を掻き立てられた方は多いはずです。しかし、いざ調べてみようと検索すると、専門用語だらけのWikiや膨大な記事の海に溺れてしまい、「結局なんなのかよく分からない」と挫折してしまうケースも少なくありません。

この記事さえ読めば、SCPの基礎から、マニアも震える『洒落にならない怖いヤツ』、そしてその楽しみ方まで全て分かります。

結論から申し上げましょう。SCPとは、世界中のクリエイターがインターネット上で共同制作している、人類史上最大規模の『共同創作怪奇SF』プロジェクトです。

しかし、ただの創作だと侮ってはいけません。そこには、数千を超える「報告書」が存在し、それぞれが緻密な設定と、背筋が凍るようなリアリティを持っています。この記事は、難解な情報を徹底的に噛み砕き、エンターテインメントとして楽しめる「完全入門ガイド」として執筆しました。

さあ、準備はいいですか? あなたの「認識」を変える扉を開けましょう。

目次

SCP財団とは何か? 3分でわかる基礎知識

SCPの世界を理解するには、まずその中心にある「SCP財団(SCP Foundation)」という組織について知る必要があります。これは現実の組織ではなく、フィクションの中に存在する架空の秘密組織です。彼らは、一般社会の常識では説明がつかない異常な物品、生物、現象――これらを総称して「オブジェクト」または「SCP」と呼びます――を秘密裏に管理しています。

H3:「確保、収容、保護」の意味

SCP財団の名称であり、スローガンでもある「SCP」は、彼らの絶対的な活動理念である "Secure, Contain, Protect" の頭文字から取られています。

理念原語意味と役割
確保Secure異常なオブジェクトを発見し、民間人の目から遠ざけ、財団の管理下に置くこと。これにより、異常な存在が世間に知られることを防ぎます。
収容Contain確保したオブジェクトが外部に影響を及ぼさないよう、適切な設備や手順を用いて閉じ込めること。移送、隠蔽、情報の遮断も含まれます。
保護Protect異常な存在から人類を守ると同時に、その異常な存在自体をも(研究対象として、あるいは絶滅危惧種のように)破壊から守ること。

彼らの目的は「正常性の維持」です。魔法や怪物、超常現象が実在する世界において、それらが一般社会に露見し、パニックが起きないように裏で世界をコントロールしているのです。私たちが「常識」だと思っている平和な日常は、財団の多大な犠牲と努力によって守られている「薄氷の上の平和」に過ぎない――この緊張感こそが、SCP作品の根幹をなしています。

SCPは実在する?(フィクションとしての仕組み・CCライセンス)

「SCPは実在するのか?」という質問への答えは、「No(現実には存在しない)」であり、同時に「Yes(インターネット上には確かに存在する)」です。

SCP財団の起源は、2007年にアメリカの画像掲示板「4chan」の超常現象板(/x/)に投稿された一本の書き込みに遡ります。それが後述する『SCP-173』です。この「無機質で科学的な報告書形式」で書かれた不気味な怪談は、瞬く間にユーザーを魅了しました。それに触発された人々が、「もしこんな怪物を収容する組織があったら、他にもこんな怪物がいるのではないか?」という妄想を膨らませ、次々と新しい「報告書」を書き始めたのです。

現在では「SCP Foundation」というWikiサイトを中心に、世界中の執筆者が記事を投稿し、数万を超える記事が存在する巨大なシェアワールドへと成長しました。

ここが重要! クリエイティブ・コモンズ

SCPが爆発的に普及し、現在も拡大し続けている最大の理由は、その著作権ルールにあります。SCPの記事やコンテンツは、基本的に「クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0 (CC BY-SA 3.0)」というライセンスの下で公開されています。

これは簡単に言えば、「原作者の名前(クレジット)を表示し、同じライセンス条件(CC BY-SA)を守れば、誰でも自由に二次創作をして良い」というルールです。これにより、許可を取ることなく自由にゲーム化、動画化、イラスト化が行われ、作品が無限に増殖する土壌が整いました。2022年の報道では、SCP財団は「歴史上最大の共同執筆プロジェクト」になる可能性があるとも評されています。

なぜここまで流行っているのか?(二次創作ブーム)

SCPの人気を支えているのは、圧倒的な「自由度」と「参加型エンターテインメント」としての側面です。

  1. 「カノン(正史)がない」というルール
    財団には「絶対的な正解」がありません。ある記事では財団は人類を守る正義の味方ですが、別の記事では冷酷な悪として描かれます。設定の矛盾すらも「並行世界」や「解釈の違い」として許容されるため、読者は自分の好きな解釈で世界観を楽しむことができます。これがクリエイターの想像力を無限に刺激するのです。
  2. ゲーム実況の影響
    2012年に公開されたフリーホラーゲーム『SCP - Containment Breach』や、近年の『SCP: Secret Laboratory』といったゲームが、YouTubeなどの動画配信サイトで大流行しました。特に「まばたきすると死ぬ」というSCP-173のゲーム性の高さが、視聴者を強く惹きつけました。これにより、テキストサイトを知らない層にもSCPの認知が広がりました。
  3. 動画コンテンツの進化
    難解な報告書をアニメやゆっくり解説、ショート動画でわかりやすく紹介するチャンネルが急増しました。これにより、活字が苦手な10代〜20代の層もファンに取り込み、SNSでの拡散が加速しました。

SCPは、読むだけでなく、語り、描き、遊ぶことができる、インターネット上の巨大な「遊び場」なのです。


まずはこれだけ覚えよう!「オブジェクトクラス」の分類

SCPの記事を読む上で避けて通れないのが「オブジェクトクラス」です。これは、その怪物が「どれくらい強いか(危険度)」ではなく、「どれくらい収容(閉じ込めること)が難しいか(収容難易度)」を示す指標です。

初心者が直感的に理解できるよう、SCPコミュニティでは伝統的に「ボックス・テスト(箱の実験)」という例え話が使われます。あるオブジェクトを箱に入れたとき、何が起こるかでクラスを分類する方法です。

以下の表に、主要なクラスの特徴をまとめました。

クラス名ボックス・テスト(箱に入れたら?)収容難易度解説・イメージ
Safe
(セーフ)
何も起きない収容方法が確立されており、勝手に動き出さないもの。「安全」という意味ではありません。核爆弾もスイッチを押さなければ爆発しないため、この定義ではSafeです。
Euclid
(ユークリッド)
何が起こるかわからない動きが予測不能、または知性があるもの。常に監視が必要です。大半のモンスターや幽霊はこれに該当し、最も記事数が多いクラスです。
Keter
(ケテル)
箱を壊して逃げ出す収容が極めて困難、あるいは不可能。財団の全力を挙げても閉じ込めておくのがやっと、という危険な存在。脱走のリスクが常にあります。
Thaumiel
(タウミエル)
箱そのものである最高機密他のSCPを収容するために利用できる、財団の「切り札」。一般職員はその存在すら知らされません。
Apollyon
(アポリオン)
箱に入れることすらできない収容不能収容が不可能で、世界滅亡(K-クラスシナリオ)をもたらすことが確定している絶望的な存在。これが出たら基本的に「詰み」です。

Safe(セーフ)

Safeクラスは、財団がその性質を十分に理解しているか、特定の操作をしない限り無害であるオブジェクトに割り当てられます。

しかし、油断は禁物です。例えば、触れるだけで即死するボタンがあったとしても、誰も押さなければ無害なのでSafeに分類されます。あくまで「管理コストが低い」という意味であり、その効果自体が安全とは限りません。

Euclid(ユークリッド)

Euclidクラスは、性質が完全には解明されていない、または予測不可能な挙動をするオブジェクトです。

特に、自律的な思考や感情を持つ生物・人型オブジェクトは、どれだけ大人しくても「いつ気が変わって暴れだすかわからない」ため、基本的にEuclidに分類されます。初心者キラーとして有名なSCP-173やSCP-096もこのクラスです。

Keter(ケテル)

Keterクラスは、財団にとって頭痛の種です。

その性質が極めて敵対的であったり、物理法則を無視して移動したりするため、収容状態を維持するために膨大な資源と複雑な手順を必要とします。「常に壁を修復し続けなければならない」「特定の儀式を24時間続けなければならない」といった、綱渡りのような管理が行われています。物語としての緊張感が最も高いクラスと言えるでしょう。

Thaumiel(タウミエル)やApollyon(アポリオン)など

これらは特殊なクラスです。

Thaumielは、Keterクラスなどの危険なオブジェクトを抑え込むために使われる「毒をもって毒を制す」存在です。

Apollyonは、もはや財団の手には負えない、世界の終わりを告げる存在です。このクラスが登場する記事は、財団の敗北や終焉を描く壮大なストーリーであることが多いです。


【初心者必見】絶対に知っておくべき有名なSCP 5選

数千以上あるSCPの中から、これだけは知っておかないと話についていけない「基本にして頂点」の5体を厳選しました。どれも個性的で、SCPの魅力を凝縮した存在です。

SCP-173「彫刻 - オリジナル」

  • クラス: Euclid
  • 起源: 全ての始まり(The Original)。2007年に投稿された最初のSCP。
  • 外見: 加藤泉氏の作品『無題 2004』に酷似した、コンクリートと鉄筋で作られた歪な人型彫刻。顔にはスプレーで描かれたような奇妙な模様があります。
  • 異常性: 「視線が外れると、超高速で移動して首をへし折る」SCP-173は生きているかのように動きますが、誰かに「見られている」間は石のように動けません。しかし、瞬きや視線を逸らした一瞬の隙に、目にも留まらぬ速さで背後に回り込み、頭蓋骨の底を圧迫して首を折ります。
  • 怖さと魅力: 収容室には常に排泄物と血液の混じった赤茶色の汚物が勝手に出現するため、定期的に清掃員(Dクラス職員)が入らなければなりません。清掃は必ず3人で行い、1人が作業している間、残りの2人は互いに「瞬きするぞ!」と声を掛け合いながら、絶対にSCP-173から目を離さないように監視し続けます。「だるまさんがころんだ」という子供の遊びを、命がけのホラーに昇華させた緊張感。そして、一瞬のミスが死に直結するゲーム性の高さが、SCPというジャンルを確立させました。ゲーム『SCP: Secret Laboratory』などでは、プレイヤーが実際にこの恐怖を体験できます 8。さらに、ある並行世界の話では、SCP-173が自己増殖を始め、数千体に増えて北米大陸を壊滅させるという悪夢のようなシナリオも描かれています。

H3:SCP-682「不死身の爬虫類」

  • クラス: Keter
  • 外見: 腐敗しかけた巨大なワニやトカゲのような怪物。体表は未知の物質で覆われています。
  • 異常性: 「絶対的な不死性」と「全生命への憎悪」極めて高い知能を持ち、人間の言葉を話しますが、その口から出るのはあらゆる生命に対する深い嫌悪と殺意だけです。最大の特徴は、驚異的な再生能力と適応能力です。体の95%を破壊されても復活し、酸のプールに沈めても酸への耐性を獲得し、宇宙空間に放り出しても適応して戻ってきます。
  • 怖さと魅力: 財団はSCP-682を危険視し、何度も「終了(殺害)」を試みています。核兵器、他の強力なSCP、物理法則を無視した兵器などを投入しますが、SCP-682はその全てに適応し、生き延びてしまいます。この「財団 vs 不死身のトカゲ」のいたちごっこは、SCP界における一種の様式美となっており、読者は「次はどうやって生き残るんだ?」という逆説的な期待を持って記事を読んでいます。一方で、ジョーク記事(SCP-682-J)では、「最高のトカゲ」と名乗るコミカルな存在として描かれることもあり、愛されキャラとしての一面も持ち合わせています。

SCP-096「シャイガイ」

  • クラス: Euclid
  • 外見: 身長2.38メートル、筋肉量が極端に少ない、ガリガリに痩せ細った蒼白い人型。口は通常の人間よりも4倍大きく開きます。
  • 異常性: 「顔を見られると、地の果てまで追いかけて殺しに来る」普段は独房で泣きながらうずくまっています(通称:シャイガイ/内気な奴)。しかし、その顔を誰かが「見た」瞬間、SCP-096は激しい苦痛と怒りの状態(Raging state)に入ります。顔を見たのが直接の目視であれ、写真であれ、映像であれ、結果は同じです。SCP-096は顔を見た人物(SCP-096-1と呼称)の位置を即座に特定し、障害物をすべて破壊しながら一直線に突進します。
  • 怖さと魅力: この突進は、物理的に阻止不可能です。戦車砲で撃とうが、深海にいようが、地球の裏側にいようが、SCP-096は止まりません。標的のもとにたどり着くと、その痕跡が残らないほど徹底的に殺害します。特に有名なエピソードは、「4ピクセル」の事件です。ある登山家の古い写真の背景に、わずか4ピクセルのサイズでSCP-096の顔が偶然写り込んでいました。何年も経ってからその写真を見た登山家が、突然襲来したSCP-096に殺害されるという話は、デジタル社会における情報の拡散性と、逃げ場のない理不尽な恐怖を見事に描いています。

SCP-040-JP「ねこですよろしくおねがいします」

  • クラス: Safe
  • 起源: 日本支部(SCP-JP)発のオリジナルオブジェクト。
  • 外見: 日本の山村にある、古い木造の井戸小屋。
  • 異常性: 「猫がいる」と思い込ませる認識災害(ミーム)この小屋の中を覗くと、実際にはいないはずの「巨大な人間の目をした、毛のない猫」が見えるようになります。一度見てしまうと、その人の脳の認識機能が書き換えられ、どんな猫を見ても、あるいは暗闇や何もない空間を見ても「あ、ねこがいる」としか認識できなくなります。さらに恐ろしいのは、この影響を受けた人が他人に「ねこがいたよ」と伝えるだけで、その言葉を聞いた人にも同様の認識異常が感染することです。
  • 怖さと魅力:「ねこですよろしくおねがいします」というフレーズの、文法的には正しいけれどどこか狂気を感じる響き。そして、可愛らしい「猫」というモチーフを使いながら、精神が侵食されていく「湿り気のある恐怖」は、日本独自のホラーセンスを象徴しています。ネット上ではアスキーアート化されるなど、マスコット的な人気も誇りますが、その本質は極めて厄介なミーム汚染です。

SCP-444-JP「あかいとりのいないそら」

  • クラス: 未指定(実質的なKeter以上、あるいは特殊クラス)
  • 外見: ある特定の「文章」または「写本」。
  • 異常性: 「認識そのものを食らい、現実を侵食する幻覚世界」絶対に読んではいけない、禁断の文章です。これを読み上げると、読み手の意識は現実世界から切り離され、「赤い夕焼けと赤い草原が広がる世界」へ飛ばされます。
  • 怖さと魅力: 幻覚世界では、被験者は空を飛ぶ能力を得ます。しかし、やがて巨大な「緋色の鳥」が現れ、被験者を喰らい尽くします。鳥に喰われると、現実世界の肉体は暴れだし、周囲を攻撃し始めます。最も恐ろしいのは、このSCPが「情報」を餌にして成長することです。誰かがこのSCPについて知れば知るほど、鳥は強くなり、現実世界への干渉力を高めていきます。財団は最終手段として、プロトコル「焚書(ふんしょ)」を発動。関係者の記憶を消去し、関連情報をすべて焼き払うことで、この怪物を「誰の記憶にも残っていない」状態にして封じ込めようとしました。情報の隠蔽と忘却こそが唯一の対策という、切なくも恐ろしい物語であり、日本支部の最高傑作の一つと称されています。

閲覧注意?「最強・最恐」のSCPランキング

SCPの魅力は多種多様です。ここでは3つの異なるベクトルで「最強」を定義し、ランキング形式で紹介します。

物理的に最強なSCP

単純な戦闘力や破壊規模でのランキングです。

  1. SCP-2317「異界の扉」:
    • 異次元に封印されている超巨大な太古の神。7本の鎖で封印されていましたが、財団が発見した時点で既に6本が切れていました。最後の鎖が切れた時、世界は終わります(K-クラスシナリオ)。財団にはこれを止める術がなく、できることは「解決策を探しているフリをして職員を安心させる」ことだけです(クラス:Apollyon)。
  2. SCP-682「不死身の爬虫類」:
    • 前述の通り。耐久力と適応力においては右に出るものがいません。物理的に倒すことが不可能という意味で、最強の一角を占めます。
  3. SCP-169「リヴァイアサン」:
    • 全長数千キロメートルにも及ぶ巨大海洋生物。もはや生物というより移動する大陸そのものであり、少し動くだけで巨大地震や津波を引き起こします。人類の兵器では傷一つつけられない、圧倒的な質量の暴力です。

精神的に怖い(胸糞悪い)SCP

読んだ後、夜眠れなくなるような精神的恐怖を与えるオブジェクトです。

  1. SCP-3001「レッド・リアリティ」:
    • 次元転送の実験事故により、2つの次元の狭間に落ちてしまったスクラントン博士の記録です。そこは何もない、ただ赤い光だけの空間。食料もなく、死ぬことさえできず、体が徐々に崩壊していく中で、5年間も孤独に耐え続けます。記録に残された、狂気の中で妻への愛を語りながら自我が崩壊していく様子は、読む者の心を抉ります。
  2. SCP-231「特別職員要件」:
    • あるカルト教団から保護された妊娠中の少女たち。彼女たちの胎内には邪神が宿っており、出産されれば世界が滅びます。それを防ぐため、財団は「110-モントーク」と呼ばれる処置を毎日実行します。その内容は検閲されていますが、少女に想像を絶する苦痛と恐怖を与える非人道的な行為であることが示唆されています。「世界を救うためなら、一人の少女を地獄に落としてもいいのか?」という重い倫理的問いを突きつけます。

実は人類の味方?感動するSCP

SCPは怖いだけではありません。涙なしには読めない優しいオブジェクトも存在します。

  1. SCP-999「くすぐりオバケ」:
    • オレンジ色のスライムのような生物。人懐っこく、犬のようにじゃれついてきます。触れた人を幸せな気持ちにさせる能力があり、鬱病の治療にも効果があります。あの凶暴なSCP-682さえも、SCP-999と遊んでいる間は大人しくなりました。殺伐とした財団の中における癒やしのアイドルです。
  2. SCP-243-JP「恩人へ」:
    • 意識を持った作業用ロボットアームたちの物語。彼らは自分たちを作ってくれた会社が倒産寸前であることを知り、恩返しのために自らの意思で製品を作り続けます。無機物に宿った忠義と愛、そして別れの物語に、多くの読者が涙しました。
  3. SCP-4999「見守るもの」:
    • 誰にも看取られずに孤独死する人の元へ現れる、黒いスーツ姿の男性。彼は医療行為も会話もしません。ただ静かに死にゆく人の隣に座り、タバコを差し出し、最期の瞬間まで手を握ってくれます。「誰も一人で死ぬべきではない」というメッセージを感じさせる、静かで美しいSCPです。

財団職員・Dクラスとは? 組織の内部構造

SCP財団は世界規模の巨大な官僚組織です。その内部には厳格な階級制度と、複雑な人間ドラマが存在します。

Dクラス職員(使い捨ての実験台)

「D」は「Disposable(使い捨て)」を意味するとも言われます。

主に世界中の刑務所から集められた死刑囚たちで構成されています。「刑期を終えれば釈放される」という嘘で勧誘されますが、実際には危険なSCPの実験台や、SCP-173の清掃係といった高リスクな雑務に従事させられます。

彼らは「人間」ではなく「消耗品」として扱われます。未知のウイルスに感染させられたり、怪物の餌にされたりして、多くのDクラスが命を落とします。通常、採用から1ヶ月後には「解雇(=処刑または記憶処理)」されることになっています。彼らの犠牲の上に、財団の「科学的な収容プロトコル」は成り立っているのです。

O5評議会(最高意思決定機関)

財団の頂点に君臨する13人の監督者たちです。「O5(オー・ファイブ)」と呼ばれ、彼らの正体、年齢、性別、国籍は一切不明です。

一説には不老不死の技術を使った超人だとも、人間ではない何かだとも噂されています。世界中の財団施設に対して絶対的な権限を持ち、時には「人類の9割を犠牲にしてでも1割を残す」ような冷酷な決断を下します。彼らにとって重要なのは、個人の命ではなく、人類種としての存続と正常性の維持だけです。

博士・エージェントたち(ブライト博士など)

財団には個性豊かな名物職員が登場します。彼らはしばしば「著者自身のアバター(分身)」として描かれますが、物語の中で独自のキャラクター性を確立しています。

  • ブライト博士:
    • SCP-963「不死の首飾り」に取り憑いている博士。彼が死んでも、首飾りを別の人間に着ければ、その人間の意識を上書きしてブライト博士として復活します。事実上の不死身ですが、それは「死ねない呪い」でもあります。そのストレス発散のためか、無茶な実験を繰り返したり、悪ふざけをしたりする「歩くトラブルメーカー」として人気(と悪名)を博しています。
  • クレフ博士:
    • 元GOC(世界オカルト連合、財団のライバル組織)のエージェントで、悪魔のような顔を持つとされる謎多き人物。写真に写ると顔が動物に置き換わってしまいます。SCP-682の殺害実験を指揮するなど、冷徹な実行力を持っています。通称「嘘つきのクレフ」。
  • ギアーズ博士:
    • 感情を持たないかのように冷徹で論理的な研究員。どんな恐ろしい怪物を前にしても眉一つ動かさず、淡々と記録を取ります。SCP財団の「冷徹な科学的視点」を象徴する人物です。

SCPをもっと楽しむ方法(ゲーム・動画・本)

記事を読むだけがSCPではありません。ここからは、より深く世界観に浸るためのコンテンツを紹介します。

フリーホラーゲーム『SCP - Containment Breach』

2012年に公開され、世界的なSCPブームの火付け役となった伝説のフリーゲームです。

プレイヤーはDクラス職員となり、大規模な収容違反(バイオハザード的なパニック)が起きた施設から脱出を目指します。

おすすめポイント:

  • まばたきシステム: 画面下に「まばたきメーター」があり、これがゼロになると強制的にまばたきをしてしまいます。その一瞬の隙にSCP-173が距離を詰めてくる恐怖は、他のゲームでは味わえません。
  • 有名SCP総出演: SCP-173だけでなく、SCP-096、壁を通り抜ける老人SCP-106などが襲いかかってきます。
  • 無料でダウンロードでき、現代のPCならほぼ動作します。

最近では、多人数マルチプレイが可能な『SCP: Secret Laboratory』もSteamで大人気です。人間側とSCP側に分かれて戦う対戦ゲームで、ボイスチャットを使ったカオスなやり取りや、SCP-096のHume Shield(シールド)を削り切る連携プレイなどが楽しめます。

YouTubeのおすすめ解説チャンネル

活字を読む時間が取れない方は、YouTubeの解説動画がおすすめです。

  • SCP解説チャンネル(日本):
    • 日本国内には数多くのSCP解説者がいます。初心者向けに「世界観の基礎」から「感動系」「ホラー系」とジャンル分けして紹介しているチャンネルを探すと良いでしょう。特にアニメーション形式のものは、視覚的に理解しやすくおすすめです。
  • 海外の動向:
    • 海外では実写映画並みのクオリティで作られたショートムービー(短編映画)もYouTubeで公開されており、『SCP: Overlord』や『SCP: Dollhouse』などは、言葉がわからなくても映像だけでその不気味さと、特殊部隊が異常存在に立ち向かうタクティカルな格好良さを楽しめます。

公式Wikiの歩き方・読み方

慣れてきたら、ぜひ本家の「SCP財団日本支部(SCP-JP)」サイトを訪れてみてください。

  • まずは「評価の高い記事」から:
    • トップページにある「評価の高い記事一覧」から読むのが鉄板です。多くの人に支持された傑作が並んでいます。
  • 「カノンハブ」を読む:
    • 個別の記事だけでなく、複数の記事がリンクして一つの壮大なストーリーを形成している「カノン」という概念があります。SF大作小説のような読み応えがあります。
  • 「Joke(ジョーク)」記事:
    • 末尾に「-J」とつく記事は、笑えるギャグ記事です。SCP-682-J(最強のトカゲ…の落書き?)など、恐怖に疲れた時の箸休めに最適です。

おわりに

ここまでSCP財団の世界を一通りご案内してきましたが、いかがでしたでしょうか。

  • SCPとは: 異常な存在を「確保・収容・保護」する架空の組織の物語。
  • 魅力: 誰でも参加できる「共同創作」であり、ホラー、SF、感動、ギャグまであらゆるジャンルが詰まっている。
  • 楽しみ方: Wikiを読むもよし、ゲームで絶叫するもよし、動画で考察するもよし。

SCPの世界には「認識災害(ミーム)」という言葉があります。ある情報を知ってしまっただけで、精神に異常をきたしたり、怪物を呼び寄せてしまったりする現象のことです。

ある意味で、SCPというコンテンツそのものが強力な認識災害かもしれません。一度この世界の面白さを「認識」してしまったあなたは、もう以前のような退屈な日常には戻れないでしょう。街角の不自然な看板、ニュースの裏に隠された違和感、そしてふとした瞬間に感じる視線…それら全てに「もしかしてSCPかも?」という物語を見出してしまうのですから。

もし、あなたがこれからWikiを開くなら、あるいは動画を見るなら、これだけは覚えておいてください。

あなたが深淵を覗くとき、深淵もまたあなたを覗いているのです。

「確保、収容、保護(Secure, Contain, Protect)」

ようこそ、財団へ。

参考

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-偏愛が気づかせる、私たちの見えていなかった世界-

なぜだか目が離せない。
偏った愛とその持ち主は、不思議な引力を持つものです。
“偏”に対して真っ直ぐに、“愛”を注ぐからこそ持ち得た独自の眼差し。
そんな偏愛者の主観に満ちたピントから覗かれる世界には、
ウィットに富んだ思いがけない驚きが広がります。
なんだかわからず面白い。「そういうことか」とピンとくる。

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